2011年1月25日火曜日

Column:焦土化した先に見える携帯市場の変化の予感

 年間純増数のうち3割以上を稼ぎ出すビッグウェーブ(=年度末商戦)を前に携帯各社の戦闘準備が整いつつあるようだ。何せ最も契約者を獲得できる時期とあって、各社一斉にキャンペーンを打ち出し地引網の如く加入者獲得を狙っている。しかし、逆にここでしくじれば、同じ規模の魚場は来年まで持ち越しとなり、まさに死活問題となる。

 特に、今年のビッグウェーブの結果次第では、携帯市場の競争構図が根底から変わる可能性があると指摘する関係者が多く、その意味でも注目されている。

 年度末商戦へ向け、まず動き出したのがソフトバンク傘下に入ったウィルコムだ。純減状態からのV字回復を目指し、2010年12月3日より他社携帯や固定電話宛の通話が、オプション契約の月額980円で定額となるサービス「だれとでも定額」を開始。

 それまで自社網内の無料通話に限定されてきた競争市場を更に一歩広げた。ソフトバンクでは3ヶ月以内の純増を公約に掲げているが、まだその兆しは見えない。

 2011年からは次の矢として、ウィルコム加入者からの紹介を受けたユーザーが新規契約で「だれとでも定額」に加入すると、紹介者と新規加入者の「だれとでも定額」が一定期間無料になる「『だれとでも定額』ご紹介キャンペーン」や、新規契約時に2回線目の「新ウィルコム定額プランS」の月額利用料が無料となるキャンペーン「もう1台無料キャンペーン」を開始するなど、てこ入れを急いでいる。

 これに対抗する形で同じような他社間通話料金無料化のキャンペーンを展開しはじめたのがイー・モバイルだ。新たに投入するスマートフォンを対象に毎月の基本料と別に月1,820円の追加料金を支払えば、同社の加入者同士だけでなく、他社の携帯電話や固定電話への国内通話も無料となる。

 また、イー・モバイルの本丸であるデータ通信系では、月額2,980円でフレッツと2時から20時までのモバイルデータ通信が利用できる「フレッツ+昼割モバイル」を新たに1月20日より開始した。純増数で2ヶ月連続UQ WiMAXに追い抜かれており、早期のてこ入れ策が必要となっていた。
 
 一方、大手サイドはどうか。ドコモ、KDDIの2社は昨年と同様に学生やその家族を対象とする携帯電話加入キャンペーンを展開。ドコモは月々の利用料から毎月390円から利用でき、最大3年間(最大37カ月)割引となり、端末がスマートフォンを利用している場合は、「パケ・ホーダイ シンプル」の利用料が525円割引され、月額最大5,460円で利用できる「応援学割」を提供する。

 KDDIは基本使用料から最大3年間、毎月390円を割り引く「ガンガン学割」の他、「auひかり」を新規契約しauケータイとの「KDDIまとめて請求」に申し込むと、2011年7月利用分から2012年6月利用分 の12カ月間、同一請求グループ内に含まれるすべてのauケータイの基本使用料から月額390円を割り引く「auひかり de ケータイ割引」を5月末まで展開する。

 現時点では、いつも奇抜なキャンペーンで注目を集めるソフトバンクがまだ目立った動きを見せていないが、遠からず発表されることだろう。

 パケット定額制⇒ガラケー高機能化⇒MNP⇒自社網内通話無料化⇒データ通信カードのPCセット販売⇒スマートフォン⇒LTE⇒SIMフリー化と目まぐるしく競争環境が変化するなかで、この会社しかできない独自のサービスという領域は驚くほど少なくなってきている。

 問題は、それぞれの会社がやるかどうかの判断だけだとすると、ますます上位にいる携帯会社の力加減次第という気もしてしまう。

 市場が焦土化した先の新たな変化について、今年は特に注目したい。
 

2011年1月21日金曜日

Column:スマートフォン市場の構造転換へ向けた‘さざ波’考

 世界的なスマートフォン旋風の立役者であるアップルのスティーブ・ジョブス氏の病気療養が発表された翌日、同社から2010年10-12月期の決算が明らかにされた。

 それによるとiPhone,iPad,Macの販売が好調で売上・利益とも前年比7割を超える大幅な伸びを記録した。製品別の販売台数では、iPhoneが1,620万台(前年同期比86%増)、iPadが730万台、Macintoshは413万台(同23%増)、iPodは1,9500万台(同7%減少)と、iPhone、iPadの販売台数は過去最高を記録した。

 iPhoneの好調な推移については、ほぼ想定通りだったものの、iPadの販売量が大きく伸びた点は少しサプライズだった。その前の7-9月期の決算ではiPadの販売台数の数字が低く、タブレット市場の需要を喚起できていないと指摘されてきたからだ。

 一方、ジョブス氏の代わりに説明会の壇上に立ったCOOのティム・クック氏の発言にはいくつか注目される点があった。例えば、先頃ベライゾンからCDMA版iPhoenが投入されたことが明らかになったが、それに関連して同氏は、「iPhoneの独占販売契約は米国が最後であり、どの国のキャリアとも契約は残っていない」とするコメントである。

 既にいくつかのメディアでは、CDMA版iPhoen投入に関してKDDIが動いているかのような論調や、iPhoenの供給基地となっておる台湾のメディアによる関係者からの日本供給についてのコメントなど、ややフライング気味となっている。

 しかし、仮にKDDIが準備しているとしても、決してその過程が明らかになることはないだろう。徹底的な秘密主義を貫くアップルを相手にお気楽な発言を続けていた携帯会社がiPhoenを獲得できなかった事からも当然である。

 それにしても、一説には就活をしている人の5割以上がスマートフォンを保有し、そのうち9割以上がiPhoenという時代だ。しかし、その一方でスマートフォン保有者の7割以上が通常の端末も持つ2台持ちという現実は、どう考えればいいのだろう。

 バッテリーなど端末自体の改善点の他、通信ネットワークに対する不安や不満がまだ多いのが実情なのではないかと勝手に推測する。スマートフォン市場の歪な構造からの転換が、大きな意味におけるトレンドの1つというところか。
 

2011年1月13日木曜日

Column:米国ベライゾンによる「CDMA2000版iPhone 4」投入

 注目を集めてきた「CDMA2000版iPhone 4」がいよいよ米国ベライゾンから発売されることとなった。これまではAT&Tのみが独占提供してきただけに、これによってAppleとAT&Tの排他的提携が終焉を迎えたこととなる。

 基本的な機能やスペックでAT&T版iPhone 4と違いはないものの、Verizon版では、「Personal Hotspot」と呼ぶテザリング機能を備えている。これは、iPhoneをルーターのようにして使い、最大5台のWi-Fi対応デバイスでインターネット接続を共有できるというもの。

 価格は、いずれも2年契約を条件に16Gバイトモデルが199.99ドル、32Gバイトモデルが299.99ドルと、これもAT&T版と同じだ。

 米国最大の携帯キャリアであるベライゾンは、これまでCDMA2000方式を採用し、世界的にはマイノリティであった同陣営のリーダ的存在だった。

 しかし、2007年末同社は次世代ではCDMA2000に競合するW-CDMA系のLTEを導入すること発表し、世界の潮流をLTEに決定付ける原動力ともなった。

 先頃開催された「2011 International CES」では、LTEサービスに対応した10種類の端末を発表したが、そのうち4機種はAndroid搭載機を用意するなどLTEへと一気に舵を切ろうとしている。しかし、今回発売される「CDMA2000版iPhone 4」はLTEには対応していない。

 「CDMA2000版iPhone 4」の発売は2月10日からということだが、ネット上には早くも2011年中に1,000万台以上のiPhone契約者を獲得する(ベライゾン契約者数-約9,300万人)という予測データも出ている。

 これまでAT&T版iPhoneについては、通信ネットワークの貧弱さを指摘されてきただけに、利用者からは歓迎するコメントが数多く紹介される。

 通信料金については、現時点では明らかにされていないものの、次の焦点は定額制料金プランに踏み切るかどうかだろう。実は米国では昨年よりAT&T、ベライゾンとも、一部ヘビーユーザーのデータ通信量を抑える目的などから、従量制課金を導入している。

 そして、最大の関心は「CDMA2000版iPhone 4」が日本へ投入される可能性についてである。国内でCDMA2000を採用するのはKDDIだけだが、周波数など純粋な技術面からだけなら、そのまま持ってきて使うことは理論上は可能であろう。

 当然だが、導入にあたってそれ以外の政治的な側面の方が大きいだけに何とも言えないものの、憶測も含め期待を集めることになることは間違いなさそうだ。

2011年1月11日火曜日

Column:一段と強まる値下げ圧力!他社向け通話定額サービス導入の波紋

 2011年に入り早くも通話料金競争が激化する兆しを見せている。昨年12月、ウィルコム他社携帯・固定宛の通話がオプション契約の月額980円で定額となる「だれとでも定額」を導入し話題を集めたが、今度はイー・モバイルが毎月の基本料と別に月1,820円の追加料金を支払えば、同様に他社の携帯電話や固定電話への国内通話も無料となるキャンペーンを展開する。 

 これは、「通話定額キャンペーン」という名称で1月14日~3月末まで展開する。通話料金が無料となるのは、1回当たり10分以内の通話が対象で、通話回数は月500回まで。10分超過や501回目以降は一律30秒18・9円の通話料がかかる。通話定額の適用期間は最長25カ月。

 スマートフォンの基本料は、2年の継続利用を前提とした場合で月4,5800円や月580~4,980円など。通話定額を適用した場合は月6,400円または月2,400~6,800円となる。

 一方、先行するウィルコムの「だれとでも定額」は、500回を超えた通話については30秒毎に21円の料金が設定されている。10分を超える通話については、各料金プランに順次した通話料がかかる。

 また、音声通話向け料金プラン新ウィルコム定額プラン(月額2,900円)、新ウィルコム定額プランS(月額1,450円)と組み合わせて利用するようになっており、基本的にはW-SIMカード対応機種向けに提供されている。

 対象端末などの差はあるものの、きしくも昨年12月に総務省が接続料の算出根拠を開示させる方針を決めたという報道が流されたばかりで、他社向け回線料金引き下げの圧力が強まりつつある。

 携帯各社は自社の携帯端末同士の通話を無料にするサービスは、既に展開済みだが、接続料を支払わないといけない他社の端末や固定電話との通話料は高く据え置いたままとなっている。そうしたなか唯一、通話料金見直しに前向きだったのがイー・モバイルだったされる。

 これによってイー・モバイルやウィルコムが加入者増加にどのくらい寄与するのか、その結果次第で大手3社も収益源である他社回線向け定額サービスへ踏み切らざるを得なくなると見られる。

2010年12月6日月曜日

Reserch Note:iPad失速で第一幕が終わったタブレット端末市場の次の戦い

 AM:ある量販店関係者との定例ミーティングにて

 スマートフォンと共にモバイル業界の起爆剤として期待を集めているiPadなどタブレット端末。米国では既に年末商戦の目玉として販売も好調とのことだが、その量販関係者によると、iPadが発売された当初こそ好調な伸びを示したものの、その後は減少傾向が続き、直近では半分近くまで落ち込んでいるらしい。

 そうした状況を憂慮してか、ソフトバンクモバイルは12月より公式ショップ「ソフトバンクショップ」でのiPad取り扱いを2,000店(これまでは100店舗強だった)に拡大するとともに、携帯機能が搭載されたモデルについて、2年契約を前提に端末代5万8,320円を実質0円にするキャンペーンを展開してこ入れを図ろうとしている。

 一方、タブレット端末市場への関心を示しているのはソフトバンクだけではない。11月末からはドコモがサムスン電子の「ギャラクシータブ」を投入したのに続き、シャープとソニーは電子書籍が読めるタブレット型端末を発売する。シャープが発売する「ガラパゴス」は、持ち運びできる5.5型と、家庭用の10.8型の2モデルを展開。電子書籍約2万冊のほか、新聞や雑誌も用意した。ソニーも「リーダー」を発売予定で、紙の本を読むように目が疲れにくい電子ペーパーを使ったのが特徴だ。

 注目度抜群のなか新たに誕生したタブレット端末市場だが、iPadの失速で第一幕は終わり、年末からはプレーヤー混戦のなか次の戦いがスタートすることとなる。

 来年初めにはiPadの新型投入も噂されているが、その関係者によると顧客に具体的な使い方を提案できるかが普及の鍵を握るとのことだった。

2010年12月2日木曜日

Column:復活の狼煙を上げたウィルコムの切り札投入

 ソフトバンクの傘下に入り、東京地方裁判所に提出していた更生計画が認可されたウィルコム再生の一歩として、毎月の基本料と別に980円の追加料金を支払えば同社の加入者同士だけでなく、他社の携帯電話や固定電話への国内通話も無料となる「だれとでも定額」を始めることとなった。12月3日より開始する。

 オプションサービス「だれとでも定額」(月額980円)に加入すると、ウィルコム以外の携帯電話や一般加入電話、IP電話への10分以内の国内通話が、月500回まで無料で利用可能となる。10分を超過した場合は利用料金コースに応じた通話料がかかる。500回を超過した場合は21円/30秒の通話料金となる。

 もともと同サービスは会社更正法の影響を受けないウィルコム沖縄が4月9日~5月31日(受付期間)の期間限定で提供した結果、5月末時点での契約数が2,500件純増の40,500件(対前月比6.6%増)を記録。全国的な反響の大きさから9月からは新たに北海道/宮城/広島で同様のサービスが試験という位置づけで提供されてきた。

 再生への道筋が二転三転し、ウィルコム自身が意思決定できる範囲が狭まるなかで、支援する親会社のソフトバンクは他社を含めた完全定額は世界初の画期的なサービスであるものの、一時的に加入者が増加しても採算割れが濃厚ということで、同サービスの商用化には消極的だったとされるが、あえてGoサインを出した理由に興味を抱く。

 勝手に推測すれば、再生にあたり何よりもピーク時(2007年7月の465万人)から100万弱の顧客流出という止血対策を優先する必要があったのではないだろうか。

 一方、複数の関係者からは、ソフトバンクによるウィルコム買収の狙いについて様々な意見を伺っているが、整理すると以下のようになる。
 ・370万の顧客基盤
 ・PHS基地局エントランス回線のSBTへのスイッチによるSBグループシナジー
 ・16万局のPHS基地局の携帯基地局向け用地としての活用
 ・周波数の獲得
 
 更生計画案では現行PHSを展開しているウィルコムへのソフトバンクの出資金額は3億円しかなく、ヒットしている「iPhone」の顧客獲得コスト約5万円/台という前提に立てば、決して悪くない買い物ではなかったか。

 もともとPHSサービスは、2000年から2004年までのKDDI時代は親会社との競合を敬遠され、データ通信を主軸にした展開を押し付けられながらも加入者を増加させてきた。2004年には米投資会社が買収し、独自のポジションを確立することに成功。しかし、その後ソフトバンクの音声定額、イー・モバイルのデータ通信定額サービスの攻勢を受け一気に失速。更には次世代PHS事業への投資負担も重なったことで経営悪化が表面化し、今年2月会社更生法の適用を申請した。

 このようにウィルコムの失敗は、弱肉強食のサバンナで体の小さい小動物が大型の肉食獣に狙われるがごとくという側面はあったにせよ、本質的な問題はコスト削減を優先するあまり、果敢に仕掛けていく力が弱かった(=無かった?)ことに尽きるのではないかと思う。

 言い方としては誠に失礼ながら、外部から社長を招いた一時期を除けば、PHSラブ(LOVE)な人達が集まり常に『守り』の視点で事業にあたっていたような・・・。

 その意味で、今回の新サービスはインパクトを持って市場では迎えられるのではないだろうか。新生ウィルコムの復活に期待したい。

2010年12月1日水曜日

Column:KDDI「IS03」ヒットの影で気になるネーミングの話題

 KDDI復活の切り札として投入したスマートフォン「IS03」が順調な滑り出しを見せているようだ。11月26日に発売となったが、同社によると、インターネット上で事前購入宣言した人の数が27万人に達しているとしている。

 同端末は、スマートフォンとしては初めて「おサイフケータイ」や「ワンセグ」など、これまで国内向けフィーチャーフォンに標準搭載されてきた機能が使えるのが大きな特徴で、和製スマートフォンの尖兵に位置づけられている。

 もっとも、27万人のうち新規契約と答えた割合は1割程度で、多くは他のau端末からの機種変更が占めているとされており、全く意地悪な見方だが、これまでKDDIには買い換えたい端末がなかったということの裏返しのような気がしないでもない。

 個人的には、ソフトバンクの「iPhone」「iPad」、ドコモの「Galaxy」などライバルはスマートフォンにクールなネーミングなのに、何故KDDIだけは「IS01」・・・「IS03」と型番のようなネーミングなのだろう???不思議だ。

 短距離走世界一のウサインボルトやレディーガガといった尖がった人を使ったクリエイティブを製作するのだから、もっと考えようもあったろうにと思ってしまう。

 伝え聞くところによると、端末を供給しているシャープは「ガラパゴス○○」としたかったらしいが、KDDIサイドの猛烈な反対にあったという話もチラホラ。

 いずれにしても、今回のヒットを本格的な回復軌道へつなげることができるか、12月からスタートする新体制に注目が集まることとなりそうだ。