2007年11月12日月曜日

◎テーブル下で進むMVNO

 ディズニーがソフトバンクモバイルのMVNOとして携帯電話事業に参入することが発表された。両社のネットワークや販売網、ブランドやエンタテインメント資産などを融合し、2008年春よりサービス開始を予定しているそうだ。

 周知の通り、国内のMVNOというとPHSが一般的だった。時同じくして、イー・モバイルもNECビッグローブら6社「MVNOコンソーシアム」を結成し、共同マーケティングや通信と放送のデジタル化の中で創出しうる新たな事業の共同研究なども行うことが目的としている。

 誰もが携帯キャリアに申し込めばMVNOができるような時代になるのか、期待は膨らむが、個人的にはまだまだではないか感じる。ディズニーもISPの抱き合わせ販売も、これまでにも誰もが予見してきたシナリオの1つでしかない。もっと、誰もが参入を検討できる取引条件や参入方法などがテーブルに上がってこないと、携帯キャリアが取引先を指名するという基本的な関係性は何も変わらないのだ。

 先日、ある関係者と情報交換をしていると、ある携帯キャリアでは音声で既にMVNOを数社に提供しているようで、これもいわゆるテーブル下で交渉の結果だそうだ。その会社によると、積極的にプロモーションすることを携帯キャリアからは止められているそうで、こうしたケースはなかなか表には出てこない。

 何故、テーブル下でしか交渉が進まないのか。理由の1つには、携帯キャリアにとって都合のいい企業と付き合いたいという考えがあるためだ推測される。別の関係者によると、自社でMVNOをやりたいというところは結構多く、そうした人達は自発的に集まり研究会なども開催されているらしい。しかし、携帯キャリアにとっては、全てを受け入れてしまったら、(携帯キャリアにとっての)秩序を壊す業種、企業が参加する可能性もある。それは、避けたいというのが本音だし、その気持ちが分ない。

 しかし、それで国民共有の財産である電波を使っている携帯電話の社会性は保たれると言だろうか?

2007年10月30日火曜日

◎アイピーモバイル自己破産

 TD-CDMAという国産技術で新規参入を目指していたアイピーモバイルが自己破産を発表した。東京地裁へ自己破産を申請し、負債は債権者約110名に対し約9億円だそうだ。

 同社は、2005年11月にソフトバンク(BBモバイル)やイー・アクセスとともに総務省より特定基地局開設計画の免許の交付を受け、携帯電話業界への新規参入を予定していたが、事業資金不足などの理由で何度かサービス延期を発表。今年に入り、事業の方向性を巡る社内のゴタゴタから筆頭株主が何回も入れ替わり(マルチメディア総合研究所→森トラスト→Next Wave Wireless LLC社→森トラスト→杉村五男氏)、免許返上は時間の問題と言われてきた。

 IMT2000の規格の1つでありながら、世界でほとんど商用化されていないTD-CDMA技術の特性(例 アドホック)を活かすことで、「既存各社との差別化を図り、モバイルの新しい市場を切り開いて行きたい」「何故、同じく新規参入する他社はTD-CDMAからW-CDMAへスイッチするのか。それでは0からインフラを作っても全く勝負にならない」・・・参入発表当時、インタビューした際に私のノートに残っている関係者の言葉だ。

 免許返上のタイミングから気になるのは、2.5GHz帯の無線ブロードバンド向け周波数割り当てとの関係だ。同周波数の獲得を目指し、現在4社が名乗りを挙げているが、選ばれるのは2社。技術方式では次世代PHS1社、モバイルWiMAX3社となっており、単純にアイピーモバイルが予定していた2GHz帯にも対象を広げればと考えるのは、当然だ。しかし、実際には次世代PHSやモバイルWiMAXには2GHz帯のプロファイルが規定されていないこと。更にはそもそもアイピーモバイルの枠は開設指針に通信の技術方式としてTD-CDMAおよびTD-SCDMAを使うことが定められていることから、一度更地にする必要もある。つまり、仮にやるにしても、それなりの時間を要するということになるのだ。

 個人的には、思い切って中国が主導するTD-SCDMA技術をアイピーモバイルが当初から選択していれば、端末や設備調達、そして資金面からもうまくいったのではないかと思っていたのだが・・。これも今となっては、あとの祭りでしかない。

2007年10月4日木曜日

◎KDDIが端末・通信分離モデルの料金プランを発表/少しずつ開門される?ケータイ市場

 KDDIは、端末価格を引き上げる代わりに通信料を引き下げる携帯電話の新しい料金体系を11月に導入すると発表した。月額基本料が従来に比べて44%、通話料が25%安くなるとしている。今後、利用者はこれまで通りのインセンティブ制度を利用した「フルサポートコース」と端末購入価格は高いが毎月の通信料金が安価な「シンプルコース」の2種類から選択できるようになる。 仮に新料金プランが市場で定着すると、端末の買い替え需要が減退し端末ベンダーは打撃を受けるという指摘がある。

 ドコモと同様の仕組みを導入するとしており、今後、市場はどちらへいくのか注目されるが、今回のKDDIのプラン内容には色々問題や恣意性も感じるものの、選択肢が増えること自体は好ましいことではないだろうか。

 携帯キャリアにとって、今回の措置は総務省の「モバイルビジネス研究会」の要望に応える形で行われたわけだが、現在の端末ベンダーやインフラ企業、コンテンツプロイダーなどの国際競争力という観点から考えると、市場オープン化は火急の課題と言える。

 例えば、携帯電話端末は国内11社を合わせても世界で10%以下。コンテンツプロバイダーは、国内市場成熟化の余波で海外で出て行ったものの、あまり成功したという話は聞こえてこない。何もその責任が携帯キャリアだけにあるとは私は思わない。その理由は、明らかに健全な市場ではないということが分かっていながら、国や業界はそれを受容してきたわけだからだ。色々な関係者の方と話をするにつけ、世界をリードしているとしてきた日本の移動体通信産業は、実は『孤独の進化』を遂げてきただけだったのではと思ってしまう。

 iモードが誕生した頃、我々のような会社には海外の携帯キャリア、ベンダーから多くの問い合わせをいただいた。理由はiモードのような先進的なビジネスモデルについて知りたいというものだ。その頃は、明らかに日本の移動体通信産業は世界をリードしていたと思う。しかし、今そうした企業の担当者と話すと一言「今の日本にはベンチマークするものがない」とにべもない。

 2008年以降、移動体通信産業には従来の携帯電話やPHSに加え、WiMAXという世界標準のシステムが導入される。こうした新サービスが市場でどのくらい受け入れられかは分からないが、確実にいえること。それは、これまで以上にコンピュータ系の企業が台頭してくるということだ。単純に通信というカテゴリーだけでくくれない移動体通信産業の未来は通信とコンピュータという異文化の衝突が本格的に起きるのだと思う。

 日本の国際競争力を強化 するために何が本当に必要で、逆に何を捨てなくてはいけないのか。
改めて考えさせられる。


2007年9月21日金曜日

◎政治力学によるパワーゲームが繰り広げられるケータイ市場

 ある人は『ゴジラ』、そしてその隣は『ガメラ』。政治力学が複雑に交差し、ビジネスまで落ちてこない。ただ、ただ周辺にいる関係者は、傍観するしかない。それが、総務省で検討されている市場オープン化と2.5GHz帯の周波数割当を巡る状況ではないだろうか。

 某企業は、周波数を申請する頃までは市場をオープン化し、既存の携帯キャリアとは異なるビジネスモデルを目指しますといっておきながら、様々な方法で周波数を獲得すると、手のひらを返したかのように既存キャリアと同質化し垂直統合化へとひた走る。

 携帯キャリアでは唯一、ボーダフォンが市場オープン化を宣言し、一時周辺は盛り上がったものの、それも自らのサービスが不調だったからという但し書きがついてしまう。携帯キャリアには、本質的に自らの手で顧客を囲い込むというDNAが備わっている生物なのだろうと思う。

 しかし、この国の政府のスタンスもよくない。何故に公正な競争を担保するのに必要な規制をするのにも慎重になる一方で、しかしコントロールするかのような振る舞いを取るのか。態度が中途半端すぎる。ある関係者は、「国は舐められている」という表現を使い、辛らつに批判する。当然だが、電波は国民共有の資産だ。単純に特定の企業だけに許された特権ではないというところから、全て民間で自由にやらせてくれという話は暴論以外の何者でもないと思うのだが・・・・。

 携帯キャリアの競争力の源泉である周波数の獲得競争は、まさに政治力学によるパワーゲームの場。早く議論が落ち着いて欲しいというのが、関係者共通の想いだろう。その意味で今回、日本通信が、ドコモとの相互接続で合意に至らず裁定を求めた件について、ドコモに回線の貸出料金を公表して通信網を開放するよう求めたが、これが今後市場オープン化の突破口となるのか注視していく必要がある。

2007年9月15日土曜日

◎PC向け定額サービス登場の功罪

 ドコモが月額4,200円~10,500円で、下り最大3.6Mbpsという通信速度でのデータ通信が利用できる新料金プラン「定額データプランHIGH-SPEED」を10月22日より開始する。同社では、サービス開始にあわせて、多くのユーザーに利用してもらうことを目的としたキャンペーンを実施。期間は2007年10月22日~2008年1月31日で、その間は、額利用料の上限が最大4,200円になるとしている。

 これにより、PC向け定額サービス時代が本格的にスタートすることになる。同様のサービスは、携帯キャリアではイー・モバイルが、PHSキャリアではウィルコムが提供しているが、加入者規模、対象エリア、通信速度のいずれをとっても、業界へ与える影響は比較にならない。

 また、PC向けの定額サービスという領域に踏み込んだということは、競合するソフトバンクモバイルがすぐに追随できなかったことからも分かるように、十分に耐えうる通信インフラを整備しており、運用面でも問題ないという同社の自信の表れという見方もできなくはない。

 しかし、このニュースに接し個人的に感じたこと。それは、MVNOへ提供できる電波はあるだろうかということだ。モバイルビジネス研究会の議論が続いている状況で、あえてこの時期にピークトラフィック型のサービスを導入してきたことにちょっとした違和感も覚える。

 確か携帯キャリアがMVNO提供に消極的だった頃(今もそうかも知れないが)の理由として、以下の2つの根拠があった。
①そもそも論(通信キャリアは自ら数千億円というリスクを抱えてインフラを構築しており、そうしたリスクをとらないMVNOに何故、賃貸しなくてはいけないのか)
②パンパン論(既に通信トラフィックは逼迫しており、他社へ貸し出す余裕はない)

 まさか、網がかかる前にやってしまえという訳ではないとは思いたいが、MVNOの行方にどのような影響を及ぼすのか、注視していく必要があると思う。

2007年9月14日金曜日

◎魅力的に映るのか携帯電話基地局市場

 先日、携帯基地局市場へ運送会社の佐川急便が参入というニュースが流れt。建物などへの設置交渉から施工管理、保守までを一括して手掛け、本業の物流に続く新たな事業の柱づくりを狙うというもので、いわゆる基地局エンジニアリング事業への参入ということになる。

 MCAの年間会員制レポート「携帯電話基地局市場の現状分析と将来予測2007」によると、2006年度の国内携帯基地局の設備投資は、1兆3,499億円で前年比20.8%の増加となり、成熟化が加速する市場にあって成長力の高い分野といえる。背景には、以下の点が挙げられます。
①MNP(Mobile Number Portability)がはじまり、簡単に他社への乗換えができるようになったことで、3Gサービスの通信品質、ネットワークカバレッジの強化が競争上、重要になってきていること
②ボーダフォンを買収したソフトバンクが、4つのコミットメントの中で、「通信インフラ」を強化したこと
③13年ぶりの新規キャリアとしてイー・モバイルが参入し、基地局整備がスタートしたこと

 順調な成長が続く基地局市場だが、現在、関係者の間ではこの市場に関し、今後も同じように成長が続くのかという見方について、議論が色々あるようだ。ある方は、3Gから3.5G、3.9G。そして4Gへと通信技術が進化するなかで、今後も順調な成長が続くとコメント。しかし、別の関係者は、フェムトセルなど数量ベースでは順調かも知れないが、金額ベースではそれほど伸びないと言うのだ。

 いずれも、これからの基地局の技術トレンドからの視点ということになるが、個人的にもう1つも逃してならないアングルがあると思う。それは、携帯電話キャリアの収益力ということだ。

 市場のパイが確実に少なくっている状況下で、各社の競争は激しさを増しており、今後売上が劇的に上がるという事態は考えにくい。年々、競争は激化し売上だけでなく、次第に収益力にも影響を及ぼす。そうなると、基地局投資の効率化ということは、市場全体の流れとして、当然想定されるべき事態だろう。

 基地局の投資効率をどう上げる?そのソリューションを提供できるか否かが、参入ベンダー生き残りの1つの条件となるのではないだろうか。 

▼参考資料
年間会員制レポート「携帯電話基地局市場の現状分析と将来予測2007

2007年9月11日火曜日

◎ドコモ地域会社統合?

 今日の日経新聞によると、ドコモは2008年度中にも地域会社8社を吸収合併するという報道が流れた。目的は、地域ごとにばらばらだった販売戦略を一本化するとともに、間接部門統合化で経営効率化を図るため。ドコモは昨年10月のMNP(Mobile Number Portability)以降、一人負けの状態が続いている。

 もともと地域会社方式によって競争が繰り広げられてきた携帯電話市場だが、2001年10月にはKDDIがau事業(沖縄セルラー除く)を、ソフトバンクも旧Jフォン時代の2001年11月にJフォンがJフォン東日本、Jフォン東海、Jフォン西日本を吸収合併し、それぞれ1社体制を確立している。 ちなみに、ウィルコムも2000年1月に統合済み(ウィルコム沖縄除く)。  

 既に市場は全国1社体制へと移行しているにも関わらず、何故ドコモがこれまで地域会社方式にこだわったのか疑問だが、そもそも地域会社ごとに会社が設立されてきた背景には、郵政省(現 総務省)からの事業免許が地域ごとに割り当てられてきたという歴史的経緯があるためだ。  

 一般的に地域会社方式のメリットとして挙げられるのが、地域ごとの特性、実情にあったエリア戦略が展開しやすいということが言われている。しかし、その反面、コスト上効率化いにくいというデメリットがある。

 コスト削減もそうだろうが、やはり今のドコモにとってはマーケティング力の強化が緊急課題。遅きに失したという感もあるが、個人的には以前よりドコモが本当に『そろそろ反撃してもいいですか?』という狼煙を挙げるなら、何よりもドコモ2.0のような小手先ではなく全国1社化という体制整備が必要だと思っていたので、まずは好意的に受け止めたい。

2007年9月9日日曜日

◎2007年8月ケータイ加入者動向分析

 電気通信事業者協会(TCA)が発表した8月の携帯電話加入者数は、累計で9,887万7,800となり、7月末から32万4,500の増加。伸び率はやや鈍化した。PHSの契約数は497万5600で、携帯とPHSの累計契約数は1億385万3300となった。携帯・PHS合計の普及率は81.3%で、携帯のみでは77.4%となった。

 8月の特徴的な動向として以下の点が挙げられる。
①ソフトバンクモバイルが4カ月連続1位を獲得 
-KDDIも15万強と好調で、au単体では20万契約を突破
②NTTドコモは9ヶ月ぶりの純減(2万2,900件)で、創業以来2度目 
-ファミ割MAX、ひとりでも割引を導入時期が8月後半 -端末価格の高さ/ドコモ2.0キャンペーンのターゲットである若年層取り込み不調 
-ドコモの「2in1」を利用したサブ番号(Bナンバー)の契約数は2万5000の純増で累計13万9,400
③MNP利用者でリードするKDDI 
-ドコモ:-9万200人/au:+7万1,200人/ソフトバンク:+1万8,900人
④ウィルコムが1万3,900人の純減 -2004年2月以来で3年6カ月ぶり
⑤イー・モバイルも8月に10万件突破

 ドコモの累計契約シェアは、純増数の低迷で漸減傾向にあり、シェアは2007年3月末の54.4%から8月末には53.5%と0.9ポイント低下。一方。KDDIは3月末に比べ0.2ポイント増の29.3%。ソフトバンクは0.6ポイント増の17%と初の17%台へ乗せた。