2012年11月26日月曜日

LTEの電波状況のニュースに見るステマの可能性



 iPhone5の発売以降、各社の通信インフラの整備状況についてのニュースを目にする機会が増えている。

 ガラケーの10倍以上のトラフィックが発生するスマートフォンの普及が、着実に携帯キャリアのインフラ能力を限界へと追いやっており、Wi-Fi拠点の拡充などオフロード対策を急いでいるものの、特効薬を見出せないでいる。

 iPhone5の登場で携帯インフラが更に注目されたのには、同端末で使用する2.1GHz帯という周波数にあった。

 ソフトバンクもKDDIも、同周波数の準備が不十分で、なかでもソフトバンクについては、1.7GHz帯を持つイー・アクセスを買収までに至ったことは記憶に新しい。

 そんな両社のつばぜり合いの影響もあるのか、いくつかの調査会社から携帯各社のLTEの電波状況(広さ/スピードなど)についてのレポートが発表されている。

 全てのデータに目を通しているわけではないが、なかには「え~」と違和感を覚える内容もあったりする。

 弊社の専門分野の1つは「携帯インフラ」だが、別にそうでなくても、この業界で仕事をやられてている方なら、分かると思うのだが。

何故こうした違和感を覚えるようなデータが次々に出てくるのか?

 最近、意見交換した知人(コンシューマ系同業者)によると、答えは「ステルスマーケティング」なのだと言う。つまり、データをある会社(クライアント)にとって有利なように加工し、発表してお金を得ているのだ。続けてその人は、「クライアントのなかには、そうした細工をする部隊まで存在する」と解説する。

 決して表にはでないことなので、その真偽については図りかねるが、現在の状況は仮にそうであったとしてもおかしくないかもと思ったりする。

執筆:天野浩徳
 
 

2012年11月22日木曜日

流通へも押し寄せるスマタブ時代の変化の波


 先日、ネット上でKDDIが2013年末までに「家電量販店で携帯電話の販売に携わる契約社員を約2500人雇用する方針を固めた」というニュースが流れた。
 
 スマートフォンの普及に伴い、使い方や料金体系が複雑になってきおり、消費者にわかりやすく説明・提案できる人材を育成していくには、派遣ではなく、契約社員や更には正社員化が望ましいとの判断によるものだとしている。
 
 当然だが、現場で働くスタッフにとっては、派遣よりは契約や正社員の方が待遇も安定し、好ましいことは間違いない。
 
 もとより、携帯電話の販売現場は「3K」の1つと言われ続け、その状況は改善するどころか、スマートフォンの登場で面談時間が長くなったり、顧客のクレームも多くなったりと悪化の一途を辿っている。
 
 携帯電話の販売チャネルは大きく、家電量販店と携帯ショップの2つに分類されるが、状況はショップでも全く同じだ。
 
 携帯ショップの運営は、基本的には携帯キャリアではなく、代理店が行っている。
 
 代理店でも事情は同じで、その販売の大変さから人材の募集については、慢性的な課題となっている。
 更には近年のお金を直接顧客に落とし、その分代理店向けを引き締める(手数料引き下げ)といった携帯キャリアの姿勢に代理店からは批判的な意見もでてきており、これまでのような蜜月時代が端境期を迎えている。

 もっとも、携帯キャリアとしては激化する競争状況のなかで、スマタブ時代の最適なカタチ(エコシステム)を模索している段階であり、今回のKDDIの契約社員雇用化の他にも、ソフトバンクモバイルが来年から導入する「優良オーナー制度など、まさに代理店との新たな距離感について走りながら考えているように映る。
 
 そして、複数の関係者によると、その変化ははじまったばかりのようだ。あるところでは、その関係を更に大きく変化させるようなことを検討している。
 
 変化の波は、流通へも大きな変革を迫っていくこととなりそうだ。

執筆:天野浩徳

2012年11月16日金曜日

【iPhoneインパクト】で考えさせられる『大儀』と『発信力』の大切さ



 スマタブ時代に最適なカタチ(エコシステム)へ向けた進化の途中なのかもしれない。

 ドコモによる「らでいっしゅぼーや」、「タワーレコード」などの子会社化による総合生活企業化。

  KDDIによる携帯と固定連携によCATV会社取り込みやスマートバリュー、ソフトバンクによるイーアクセスやスプリントネクステル買収なとなど、相変わらず話題には事欠かない業界である。

 フィーチャーフォンのときのように、明確なターゲットを設定し、ひたすらキャッチアップしていくのではなく、スマタブ時代は、各社が思い描く未来へ向け走っていくということなのかも知れない。

 しかし、こうした戦略も各社が至近距離で鉄砲を打ち合っている現場で勝ち続けなければ、単なる絵空事となってしまう。

 そんな観点で足元を見て行くと、言わずもがなで戦況(=勢いの差)は明らかである。

 予想されていたことだが、iPhoneのパワーは圧倒的だ。果たして、iPhoneに背を向けたドコモの選択は正しかったのか。ここへ来て苦境から脱するためにiPhone投入に踏み切るのではと語る識者もいると聞く。

 アップルの条件を丸呑みするカタチでいち早くiPhoneを手にしたソフトバンクに続き、あれほど「Android au」というキャッチコピーを大々的に宣伝していたKDDIはというと、手のひら返して今に至っている。

 そんな事を考えると、この後に及んでドコモがiPhoneを扱うという選択肢はあり得なくもないのではと思ったり。

 仮に、ドコモがiPhoneを扱うようになれば、今の市場構図を一変させるだけのインパクトとしては十分すぎるだろう。

 ただ、個人的に最近思うのは、現場が大事だからこそ、それ以上に「大義(大切にしている価値観や考え方)」を顧客へ向けて発信していく必要があるのではないかということ。



◎何で、iPhoneを売っているのか。
 
◎何で、iPhoneを売らないのか。

  例えば、純増競争ではiPhoneを扱っているところが有利に見えるが、彼らにとってアップルなしの経営はもはや考えられない。定期的に意見交換させていただいている複数の関係者は、その未来について、「アップルに手足を縛られている姿が想像できる。」と口を揃える。

  つまりは、そういう犠牲を強いながら、iPhoneの果実を受け取っている訳だが、彼らからはそれ以外は何もメッセージとして聞こえてこない。ただ、それだけということだ。

 一方、ドコモがiPhoneを扱わない理由は何なのか?

・国内端末ベンダーを守るため・・・。

・土管屋になるのが嫌だ・・・・。

・顧客情報をアップルに持っていかれる・・・。

 未来から繋がる今の行動や選択に、顧客に説明できる「大儀」があるのか。もしあるとしたら、それは「大儀」ではなく単なる「自己都合」だったりはしないのか。

 
 そんなことを考えさせられる3社三様である。

執筆:天野浩徳

2012年10月24日水曜日

国内端末ベンダーと部品メーカーのチカラ関係



 ソニーが端末の国内生産を終え、今後は海外から調達することに。今や、端末ベンダーの多くが同様の形態にシフトし、ヒトは配置転換や人員削減で対応、工場は修理センターに化してしまう。

 一方、今回iPhone5にはサンスン訴訟の影響があるとは言え、日本の部品メーカーの多くが採用されている。

 経済学では、素材に近い産業ほどグローバル展開が進みやすく、製品やサービスほどローカル化しやすいとされているが、まさに今の日本の携帯産業は、そうした構造にあるのではないか。

 水面下で国内の端末ベンダーと部品メーカーとのチカラ関係が逆転してきていると見て間違いなさそうだ。

執筆:天野浩徳

2012年10月22日月曜日

イーアクセス社名存続の真意



 ソフトバンクによるイーアクセス買収後の焦点として、今後注目されるのが、プラチナバンド割り当ての問題ではないだろうか。

 もともと、700/900MHzの周波数割り当てについて、総務省は1社1枠の割り当てを基本方針に臨んだわけだか、今回ソフトバンクによるイー・アクセス買収が行われ、実質その枠組みはわずか数ヶ月で瓦解してしまった。

 総務省による周波数割り当てから短期間で買収へと動き出したことで、関係者のなかには、その割り当てを待って仕掛けたのだという見方をする人もいる。

 しかし、仮にそうだとしても、そんなことをソフトバンクが面と向かって肯定することはないだろう。もしやってしまったら、周波数を返上しなくてはならないからだ。

 総務省の基本方針は、あくまで1社1枠なのである。

 では、今回の買収によってソフトバンクはプラチナバンドの一つを返上しなくてはならないかというと、そうとも言えないのではないかと思っている。

 何故なら、イーアクセスという会社は当面存続させる方針だからだ。

 つまり、記者会見の席上でイー・アクセスの社名を当面は存続させるという理由に、イーアクセスに愛着のあるファンがいるためと答えていたが、もちろんそれは否定しないが、実はそれ以上に獲得したプラチナバンドを返上しなくていいようにするには、少なくともソフトバンクに吸収することは避ける必要があるとの経営判断があったのでないかと推察する。

 ある関係者は.「今回の買収によるプラチナバンド返上の問題は、白か黒かと聞かれると、黒ではないグレーということだろうが、現在のスキームであれば、問えないのではないか」と言う。

 以前にあったソフトバンクによるイー・アクセスモバイルネットワークのMVNOしかり、ギリギリの線上をハンドリングしながら中央突破していく同社の真骨頂を、またもや今回見せつけられているような。

 今後の総務省を中心とした議論に注目していきたい。

執筆:天野浩徳

2012年10月18日木曜日

ソフトバンクのM&A戦略の波紋


 iPhone5投入後、携帯各社の争いは一層激しさを増している。

 万全の準備でiPhone5発売を迎えたKDDIが、テザリング、電池持ち時間改良、スマートパス対応、4Sとの同じ料金体系などなどで序盤をリードしたかと思いきや、ソフトバンクは得意の「後だしジャンケン」で追撃。

 更には、一向に改善しないインフラの抜本対策としてイー・アクセスを買収したかと思いきや、米国三位のスプリントまで手にいれて一気に世界三位の携帯キャリアに駆け上がってしまった。

 買収した二社については、以前より金融機関の売却リストに載っていたとされ、ソフトバンク以外の通信キャリアでも検討されてきたことは容易に察しがつく。

 現在、携帯市場はLTE時代を迎え、新たなパラダイムの転換点にある。

 戦略には、自ら成長するための『打ち手』と、もう一つ。敵に致命的な一手を打たせない『封じ手』があるのではないかと思う。

 今回、派手に報道されたソフトバンクの一連のM&A。なかでもイー・アクセスを持っていかれたことが、ライバル各社にとって、自社にとって魅力がないということだけでスルーしてよかったことなのか?個人的には、そんなことは決してないように思うのだか。

 いすれにしても、この結果は遠くない将来に明らかになるだろう。

執筆:天野浩徳

2012年5月14日月曜日

Column:ようやく活路を見出したウィルコムのPHSサービス

ウィルコムのPHSユーザ数が順調に増加しています。2012年3月単月には13万1,500件
の純増を記録しました。それに伴い、累積ユーザ数が過去最高の468万1,600件とな
り、2007年7月の465万9,100件を超え、4年8ヶ月ぶりの過去最高値を更新していま
す。
 一時は携帯電話サービスとの競合からユーザ数が減少し、経営が悪化した結果、2010
年2月に会社更生法の適用申請を行いました。その後、2010年12月にはソフトバンク
傘下となり、経営の立て直しを図っています。
 転機となったのは、2010年12月から提供を開始した「だれとでも定額」です。だれと
でも定額は携帯電話や固定電話サービスでも10分以内の通話であれば、500回まで月
額980円でかけ放題となる料金プランです。サービス開始から学生など若年層を中心
に人気を集めており、通話専用の2台目需要を取り込んでいる状況といえます。
 思えば、PHSサービスは従来から若年層向けの移動体通信サービスとされていまし
た。そのような中、PHSサービスはだれとでも定額の提供により、通話専用端末とし
ての存在を確立したのではないでしょうか。携帯電話サービスとの真正面からの競合
ではなく、大手キャリアの提供が困難な、だれとでも定額はウィルコムが見出した
PHSサービスの大きな差別化ポイントといえるかもしれません。

2012年4月2日月曜日

Column:行き過ぎたMNP競争が一部ユーザのキャッシュバック悪用に
日本通信が2012年3月20日から、キャリア各社の過度なMNPインセンティブに対する公開抗議として、自社の音声付きSIMサービスすべてに1年間の最低利用期間を設定しました。日本通信の今回の措置はキャリア各社のMNPにおける多額のキャッシュバックが影響しています。

確かに報道発表やヒアリングで聞いたところによると、1回線あたり30,000であったり、50,000円であったり、果ては70,000円程度のキャッシュバックが行われているようです。こうしたキャッシュバックを悪用し、何度も契約と解約を繰り返すことでキャッシュバックと違約金との利ざやを稼ぐケースが多発しています。

日本通信によれば、2011年12月から2012年2月までの3ヶ月間で、新規契約後15日以内に解約したMNP利用数は520回線に達したといいます。前年同期のMNP利用数は2回線であったため異常な増え方とともに、キャリア各社のMNP競争が激化していることが伝わってきます。中には5回線を新規契約し、3日で解約と契約を何度も繰り返すユーザが増加しているともいわれています。

監督省庁である総務省はキャリア各社の自主的な対応策を待つしかないと、お手上げの状況です。ただ、これまでキャッシュバックの抜け道となっていたソフトバンクモバイルのプリペイド端末や日本通信の音声付きSIMサービスが1年未満の解約への違約金設定を実施しました。それに伴い、今後はキャッシュバックの悪用も沈静化していくものとみられます。キャリア各社が投下するキャッシュバックは、既存ユーザからの利用料が原資となっています。

ぜひともキャリア各社には自社ユーザから徴収した費用を有効活用して欲しいものです。

執筆:大門太郎

関連資料
「2015年度における携帯電話市場の動向と予測」
~キャリアの視点から2015年度の携帯電話市場を総合的に分析~
http://www.mca.co.jp/pay_contents/FormMail/forecast2015.html

「携帯電話基地局市場及び周辺部材市場の現状と将来予測」
~基地局市場をキャリア・メーカー・エンジニアリング会社等多角的な視点から トータルに分析~
http://www.mca.co.jp/pay_contents/FormMail/mobileBasement&PartsMarket2011.html

モバイル-IT調査レポート「IT Forcaste Report」
http://www.mca.co.jp/ifr/top.htm

2012年3月27日火曜日

Promotion:新刊「2015年度における携帯電話市場の動向と予測」の見所は?
今回の「MCA Analyst Column&Report.Blog」では、「2015年度における携帯電話市場の動向と予測」の見所を紹介します。調査レポート制作中にはソフトバンクモバイルの900MHz帯獲得が決定し、それらの内容も網羅した最新情報を掲載しました。

予測の前提条件としても、NTTドコモによる2012年中の「iPhone」投入、NTTドコモやKDDI、イー・アクセスの700MHz帯獲得見込み、さらにNTTドコモあるいはイー・アクセスによる1.7GHz帯の獲得を想定し、これらを加味した予測を行っています。

スマートフォンの普及はもちろんのこと、NTTドコモのLTEサービス「Xi」をはじめ、キャリア各社のLTEサービス普及予測まで広く分析しました。基本的にキャリアからみた市場把握に特化していますが、スマートフォンやフィーチャーフォンなどの販売・出荷台数も予測しています。また、これから普及に期待のかかる通信モジュール、スマートフォンのテザリング機能が競合となる通信カードも対象に含めました。

調査レポートの体裁では、2010と2015年度での対比、あるいは2010から2015年度までの推移など、携帯電話市場の変化の可視化に気を配りつつ、調査レポートのみやすさ、グラフや表以外にも予測における根拠など必要不可欠な情報を盛り込んでいます。既存のお客さまにも弊社の調査レポートは“みやすい”“予測根拠も明確”との評価も多くいただきました。

2015年度における携帯電話市場の動向と予測は、今後の携帯電話市場を把握したい方々に最適な調査レポートになっているかと思います。お手数ですが、こちらのメールアドレス(info@mca.co.jp)にご連絡いただければ、調査レポートの見計いにも対応します。ご関心のある方、ぜひ、この機会にご連絡お待ちしています。

なお、弊社ではキャリアのみならず、無線機や部材ベンダ、エンジニアリング会社の動向を重視した「携帯電話基地局市場及び周辺部材市場の現状と将来予測」も発刊しています。こちらはキャリア別ベンダ・エンジニアリング会社シェア、サービス・周波数帯別設備投資額の予測などコアな情報を掲載しました。

執筆:大門太郎

関連資料
「2015年度における携帯電話市場の動向と予測」
~キャリアの視点から2015年度の携帯電話市場を総合的に分析~
http://www.mca.co.jp/pay_contents/FormMail/forecast2015.html

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~基地局市場をキャリア・メーカー・エンジニアリング会社等多角的な視点から トータルに分析~
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モバイル-IT調査レポート「IT Forcaste Report」
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2012年3月12日月曜日

Reserch Note:強まる設備投資の抑制
ようやく、「2015年度における携帯電話市場の動向と予測」が発刊しました。制作が遅れ、ご予約いただいておりました関係各位には大変ご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫びいたします。

前回の「携帯電話基地局市場及び周辺部材市場の現状と将来予測」発刊から、およそ3ヶ月の期間でしたが、設備投資額関連でも新たな動きが出ています。無事に900MHz帯を獲得したソフトバンクモバイルは投資拡大を発表する反面、その他のキャリアは投資を抑制する方向にあります。

ソフトバンクモバイルは900MHz帯を獲得したことに伴い、これまで2011と2012年度の2年間の連結設備投資額を1兆円としていたソフトバンクが、1,000億円積み増しし、1兆1,000億円としました。また、2013年度に4,500億円の投資を計画することにより、2011から2013年度の3年間合計で1兆5,500億円としています。投資抑制を強めるNTTドコモとKDDI(au)に比べ、ソフトバンクの投資意欲は旺盛です。

一方、NTTドコモの投資抑制は続いていく見込みですが、7,000億円という業界トップの投資規模は継続するものとみています。また、KDDI(au)は2012年度にLTEサービスとEV-DO Advancedを導入するため、一時的に微増となりますが、全般的に投資抑制が進む見込みです。

設備投資に関し、平均的な投資を計画するNTTドコモ、上下の激しいソフトバンクモバイル、緩やかに上下するKDDI(au)といったイメージです。特にKDDI(au)の場合、設備投資は緩やかに推移していますが、2008年度を境に抑制が続いています。2012年度に微増の投資が予想されますが、再び投資抑制傾向になるものと推測されます。

弊社ではKDDI(au)の投資額は2014年度以降、3,000億円規模に落ち込むものと推測しました。しかし、これが2013年度に3,000億円規模、2014年度以降にはさらに抑制される可能性もあり得るのではないかとみています。

執筆:大門太郎

関連資料
「2015年度における携帯電話市場の動向と予測」
~キャリアの視点から2015年度の携帯電話市場を総合的に分析~
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2012年1月30日月曜日

Column:キャリア各社のWi-Fi展開と懸念点
現在、モバイルキャリアによるWi-Fi基地局の拡充が進んでいます。キャリア各社が積極的なWi-Fi基地局展開を進めている背景にはトラフィックの急増が考えられます。キャリアがスマートフォンの販売を推進したことにより、スマートフォンが急激に普及しました。これらスマートフォンのトラフィックがキャリア各社の携帯電話ネットワークを圧迫しています。

NTTドコモはトラフィック分散に、電波利用効率の高いLTEサービス「Xi」を前面に押し出しています。しかし、KDDI(au)とソフトバンクモバイルはWi-Fiオフロードを積極化させています。両社もいずれはLTEサービスを開始させることになりますが、現在はWi-Fiでオフロードを図っていく方針のようです。

しかし、KDDI(au)とソフトバンクモバイルのWi-Fi展開には違いがみられます。自らWi-Fi基地局を設置するとともに提携も強化するKDDI(au)に、提携を中心にWi-Fi展開を図るソフトバンクモバイルです。こうした中、2社に比べてWi-Fi展開に後れを取っているNTTドコモは、どういった展開を図るのでしょうか。

おそらくNTTドコモもソフトバンクモバイルと同様に提携をメインに押し出すものとみられます。NTTドコモはNTTグループの中核企業であり、グループのWi-Fi基地局を有効利用することで早期的なWi-Fi展開を図っていくことでしょう。NTTグループにはNTT東日本やNTT西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTブロードバンドプラットフォームといった国内でも有数のWi-Fiキャリアがあります。これら提携することにより、2012年度上期までに30,000局、将来的に10万局へと拡大させていく計画とみられます。

ただ、Wi-Fi展開には気になる点があります。すでに都心ではさまざまな公衆Wi-Fiサービスが提供されています。そのため新たにWi-Fi基地局を設置するにはWi-Fi電波の干渉回避や出力調整などが重要となります。

こうした点を怠ってしまうと、有用な固定ネットワークが有効利用できないばかりでなく、ユーザにもWi-Fiに対する不信感を与えることになりそうです。その結果、ユーザにWi-Fiは使えないとの印象を与え、携帯電話ネットワークの利用にとどまってしまうということにもなりかねません。ぜひ、キャリア各社には、こうした点に注意を払ってWi-Fi展開を図って欲しいものです。

キャリアにおけるWi-Fiオフロードのメリット・デメリット
メリット :自社ネットワークの負担軽減
メリット :基地局設置よりも安価
デメリット:ユーザがWi-Fi網に移行すると、トラフィックコントロール不可

ユーザにおけるWi-Fi利用のメリット・デメリット
メリット :3Gサービスよりも高速
デメリット:エリアが狭い
デメリット:利用に手間がかかる(Wi-Fiに簡易接続可能なソフトの提供で解消)

執筆:大門太郎

関連資料
「2015年度における携帯電話市場の動向と予測」
~キャリアの視点から2015年度の携帯電話市場を総合的に分析~
http://www.mca.co.jp/pay_contents/FormMail/forecast2015.html

「携帯電話基地局市場及び周辺部材市場の現状と将来予測」
~基地局市場をキャリア・メーカー・エンジニアリング会社等多角的な視点からトータルに分析~
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2012年1月23日月曜日

Column:潜在的なニーズが存在する低速・低料金プラン
イオンが2011年6月から販売を開始した月額980円のデータ通信専用SIMカード「b-mobileSIM」が好調なようです。当初は14店舗の試験販売でしたが、11月までに265店舗へ拡大したことにより、月間5,000~6,000枚の勢いで売れているといわれています。

b-mobileSIMのデータ通信速度は下り100kbpsとなり、動画ダウンロードなどには不向きではありますが、メールやネット閲覧には十分利用できる速度とされています。

現在、下り最大37.5MbpsのLTEサービス「Xi」を推進するNTTドコモも、低速でも低料金であれば、こうしたプランに興味を示す層があることを再認識したのかもしれません。そのためNTTドコモも2012年3月から、月額1,380円の下り128kbpsプランの提供を開始するに至ったのでしょう。

しかし、現状のb-mobileSIMは月間6,000枚の販売実績であり、単純に年間70,000枚の規模に過ぎません。決して、大きいとはいえない市場ではありますが、NTTドコモが参入する理由はどこにあるのでしょうか。とにかく、囲い込み優先が考えられます。小なりといえども、他キャリアにユーザを奪われないよう追随した可能性もあります。

また、本来、低速・低料金プランが好調な背景には、高止まりしている大手キャリアの料金プランに対するユーザの抵抗が考えられます。こうした状況を放置していると、将来的に通信料値下げにまで拡大する恐れもあります。そのためNTTドコモも追随することにより、値下げをアピールし、本格的な通信料値下げを先延ばしにする施策ともみえます。

NTTドコモが追随することにより、さらに低速・低料金プランは注目を集めることになるでしょう。そうなった場合、他キャリアも参入せざるを得ず、ますます低速・低料金プランが注目されるに違いありません。

データ通信専用SIM
キャリア名:日本通信   NTTドコモ
開始時期 :2011年6月   2012年3月
サービス名:b-mobileSIM  未定
利用料  :月額980円   月額1,380円
通信速度 :下り100kbps  下り128kbps

執筆:大門太郎

関連資料
「2015年度における携帯電話市場の動向と予測」
~キャリアの視点から2015年度の携帯電話市場を総合的に分析~
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2012年1月17日火曜日

Reserch Note:どうなる? 700MHz帯の割当先
総務省の携帯電話等高度化委員会 700/900MHz帯移動通信システム作業班が2011年12月に第13回目の会合を開催しました。第13回目の会合では1年以上にわたって検討が進められてきた700MHz帯の干渉検討結果がまとまり、報告書案が示されています。報告書案によれば、700MHz帯は30MHz幅×2が確保できる見通しだといいます。

弊社資料「携帯電話基地局市場及び周辺部材市場の現状と将来予測」では、NTTドコモとKDDI(au)がそれぞれ700MHz帯の15MHz幅×2を獲得する方向で将来予測を行いました。一方、ソフトバンクモバイルは900MHz帯、イー・アクセス(イー・モバイル)が1.7GHz帯を獲得する予測になっています。

ただ、700MHz帯の30MHz幅×2が15MHz幅×2ずつ2社に割り当てられるのか、10MHz幅×2ずつ3社に割り当てられるのかによっては予測に変化が生じそうです。3社であれば、イー・アクセス(イー・モバイル)にも700MHz帯獲得の可能性があり、イー・アクセス(イー・モバイル)にとっては念願の新規周波数帯となります。

スマートフォンの急増により、トラヒックが逼迫している現在、すべてのキャリアがより有利な条件で新規周波数帯を欲しています。総務省も割当先キャリアには非常に頭を悩ませているものと考えられますが、ここは既存の携帯電話ユーザを最優先して考えて欲しいものです。

しかし、ユーザ数で考慮すると、規模の小さいイー・アクセス(イー・モバイル)が数千万規模のNTTドコモとKDDI(au)と同様の周波数帯幅を獲得するのは難しいかもしれません。そのため700MHz帯はNTTドコモとKDDI(au)が15MHz幅×2ずつ割り当てられ、イー・アクセス(イー・モバイル)は1.7GHz帯の5MHz幅×2を獲得するのが妥当とみています。

なお、700MHz帯の利用開始時期は2013年夏からになりますが、割当時期は2012年7月に行われる見通しになっています。

700MHz帯の再編
TV放送     :~710MHz
ガードバンド  :710M~718MHz
携帯電話(上り):718M~748MHz
ガードバンド  :748M~755MHz
ITS       :755M~765MHz

MCAによる新規周波数帯割当予想
NTTドコモ      :合計85MHz幅(<700M>/800M/900M/1.5G/1.7G/2GHz帯)
KDDI(au)     :合計60MHz幅(<700M>/800M/900M/1.5G/2GHz帯)
ソフトバンクモバイル:合計45MHz幅(<900M>/1.5G/2GHz帯)
イー・アクセス(イー・モバイル)
          :合計20MHz幅(1.7G帯<5MHz幅×2>)
※< >は新規割当予想分。

執筆:大門太郎

関連資料
「2015年度における携帯電話市場の動向と予測」
~キャリアの視点から2015年度の携帯電話市場を総合的に分析~
http://www.mca.co.jp/pay_contents/FormMail/forecast2015.html

「携帯電話基地局市場及び周辺部材市場の現状と将来予測」
~基地局市場をキャリア・メーカー・エンジニアリング会社等多角的な視点からトータルに分析~
http://www.mca.co.jp/pay_contents/FormMail/mobileBasement&PartsMarket2011.html

モバイル-IT調査レポート「IT Forcaste Report」
http://www.mca.co.jp/ifr/top.htm/

2012年1月5日木曜日

Column:ネットワーク逼迫の特効薬
現在、モバイルキャリア各社は急増するトラヒックに対し、さまざまな施策を実施しています。各社の施策を大まかにまとめると、(1)ネットワーク容量の拡大・効率化、(2)トラヒックコントロール、(3)データオフロードとなります。

NTTドコモはLTEサービス「Xi(クロッシィ)」への移行や新たな周波数帯の獲得、小ゾーン・セクタ細分化といったネットワーク容量の拡大・効率化、ヘビーユーザに対する通信速度制御、2012年10月開始予定のXiの速度制限・段階型料金プランのトラヒックコントロール、Wi-Fiサービス「Mzone」やフェムトセル、宅内Wi-Fiの活用といったデータオフロードを推進中です。

KDDI(au)が推進している「3M戦略」の“M”には、さまざまなコンテンツやサービスを利用できるマルチユース、いつでもどこでも最適なネットワークを利用可能なマルチネットワーク、好きなデバイスで利用できるマルチデバイスの“M”が込められています。ユーザはサービスやネットワーク、デバイスに制限されず、ユビキタスな利用が可能になります。

ソフトバンクモバイルは基地局の小セル化や新たな周波数帯の獲得などネットワーク容量の拡大・効率化、ヘビーユーザに対する通信速度制御といったトラヒックコントロール、駅の周りにWi-Fiを広めるデータオフロードを実施しています。

これまで各社はフィーチャーフォンを重点に置いた端末戦略を推進してきましたが、現在ではスマートフォンへのシフトを進めています。スマートフォンのトラヒックはフィーチャーフォンの10~20倍とされ、確かに各社が積極的に行うネットワーク容量の拡大・効率化とデータオフロードは重要であると考えられます。また、これらの対応はキャリアによる設備投資で賄うことが可能です。

ただ、ソフトバンクモバイルが嘆くように、いくらネットワーク容量を拡大したとしても抜本的な解決には至らず、いたちごっこの様相となります。本来、トラヒック逼迫の要因はユーザ側にあるため、ネットワーク容量の拡大やオフロード先の拡充よりも、いかにヘビーユーザのトラヒックコントロールを行っていくかが重要ではないのでしょうか。

しかし、トラヒックコントロールを行うことはユーザへ負担も伴います。そのため各社は重点的にネットワーク容量の拡大やオフロード先の拡充を図っているのでしょう。それでも将来的なトラヒック逼迫を考えると、自社内の携帯電話ネットワークを守るため、早々にヘビーユーザのトラヒックコントロールや他キャリアへの流出が必要かもしれません。

キャリア各社におけるトラヒック増への対応策
NTTドコモ
●Xiへの移行(NW容量の拡大・効率化)
●新たな周波数帯の獲得(NW容量の拡大・効率化)
●小ゾーン化やセクタ細分化(NW容量の拡大・効率化)
●ヘビーユーザに対する通信速度制御(トラヒックコントロール)
●Xiの速度制限や段階型料金プラン(トラヒックコントロール)
●Wi-Fiやフェムトセル、宅内Wi-Fiの活用(データオフロード)

KDDI(au)
●3M戦略の推進(NW容量の拡大・効率化やデータオフロードなど)
・マルチユース(さまざまなコンテンツやサービスを利用可能)
・マルチネットワーク(いつでもどこでも最適なNWを利用可能)
・マルチデバイス(好きなデバイスで利用可能)

ソフトバンクモバイル
●基地局の小セル化(NW容量の拡大・効率化)
●新たな周波数帯の獲得(NW容量の拡大・効率化)
●ヘビーユーザに対する通信速度制御(トラヒックコントロール)
●駅の周りにWi-Fiを広める(データオフロード)

執筆:大門太郎

関連資料
「2015年度における携帯電話市場の動向と予測」
~キャリアの視点から2015年度の携帯電話市場を総合的に分析~
http://www.mca.co.jp/pay_contents/FormMail/forecast2015.html

「携帯電話基地局市場及び周辺部材市場の現状と将来予測」
~基地局市場をキャリア・メーカー・エンジニアリング会社等多角的な視点からトータルに分析~
http://www.mca.co.jp/pay_contents/FormMail/mobileBasement&PartsMarket2011.html

モバイル-IT調査レポート「IT Forcaste Report」
http://www.mca.co.jp/ifr/top.htm