2012年10月24日水曜日

国内端末ベンダーと部品メーカーのチカラ関係



 ソニーが端末の国内生産を終え、今後は海外から調達することに。今や、端末ベンダーの多くが同様の形態にシフトし、ヒトは配置転換や人員削減で対応、工場は修理センターに化してしまう。

 一方、今回iPhone5にはサンスン訴訟の影響があるとは言え、日本の部品メーカーの多くが採用されている。

 経済学では、素材に近い産業ほどグローバル展開が進みやすく、製品やサービスほどローカル化しやすいとされているが、まさに今の日本の携帯産業は、そうした構造にあるのではないか。

 水面下で国内の端末ベンダーと部品メーカーとのチカラ関係が逆転してきていると見て間違いなさそうだ。

執筆:天野浩徳

2012年10月22日月曜日

イーアクセス社名存続の真意



 ソフトバンクによるイーアクセス買収後の焦点として、今後注目されるのが、プラチナバンド割り当ての問題ではないだろうか。

 もともと、700/900MHzの周波数割り当てについて、総務省は1社1枠の割り当てを基本方針に臨んだわけだか、今回ソフトバンクによるイー・アクセス買収が行われ、実質その枠組みはわずか数ヶ月で瓦解してしまった。

 総務省による周波数割り当てから短期間で買収へと動き出したことで、関係者のなかには、その割り当てを待って仕掛けたのだという見方をする人もいる。

 しかし、仮にそうだとしても、そんなことをソフトバンクが面と向かって肯定することはないだろう。もしやってしまったら、周波数を返上しなくてはならないからだ。

 総務省の基本方針は、あくまで1社1枠なのである。

 では、今回の買収によってソフトバンクはプラチナバンドの一つを返上しなくてはならないかというと、そうとも言えないのではないかと思っている。

 何故なら、イーアクセスという会社は当面存続させる方針だからだ。

 つまり、記者会見の席上でイー・アクセスの社名を当面は存続させるという理由に、イーアクセスに愛着のあるファンがいるためと答えていたが、もちろんそれは否定しないが、実はそれ以上に獲得したプラチナバンドを返上しなくていいようにするには、少なくともソフトバンクに吸収することは避ける必要があるとの経営判断があったのでないかと推察する。

 ある関係者は.「今回の買収によるプラチナバンド返上の問題は、白か黒かと聞かれると、黒ではないグレーということだろうが、現在のスキームであれば、問えないのではないか」と言う。

 以前にあったソフトバンクによるイー・アクセスモバイルネットワークのMVNOしかり、ギリギリの線上をハンドリングしながら中央突破していく同社の真骨頂を、またもや今回見せつけられているような。

 今後の総務省を中心とした議論に注目していきたい。

執筆:天野浩徳

2012年10月18日木曜日

ソフトバンクのM&A戦略の波紋


 iPhone5投入後、携帯各社の争いは一層激しさを増している。

 万全の準備でiPhone5発売を迎えたKDDIが、テザリング、電池持ち時間改良、スマートパス対応、4Sとの同じ料金体系などなどで序盤をリードしたかと思いきや、ソフトバンクは得意の「後だしジャンケン」で追撃。

 更には、一向に改善しないインフラの抜本対策としてイー・アクセスを買収したかと思いきや、米国三位のスプリントまで手にいれて一気に世界三位の携帯キャリアに駆け上がってしまった。

 買収した二社については、以前より金融機関の売却リストに載っていたとされ、ソフトバンク以外の通信キャリアでも検討されてきたことは容易に察しがつく。

 現在、携帯市場はLTE時代を迎え、新たなパラダイムの転換点にある。

 戦略には、自ら成長するための『打ち手』と、もう一つ。敵に致命的な一手を打たせない『封じ手』があるのではないかと思う。

 今回、派手に報道されたソフトバンクの一連のM&A。なかでもイー・アクセスを持っていかれたことが、ライバル各社にとって、自社にとって魅力がないということだけでスルーしてよかったことなのか?個人的には、そんなことは決してないように思うのだか。

 いすれにしても、この結果は遠くない将来に明らかになるだろう。

執筆:天野浩徳