2010年12月6日月曜日

Reserch Note:iPad失速で第一幕が終わったタブレット端末市場の次の戦い

 AM:ある量販店関係者との定例ミーティングにて

 スマートフォンと共にモバイル業界の起爆剤として期待を集めているiPadなどタブレット端末。米国では既に年末商戦の目玉として販売も好調とのことだが、その量販関係者によると、iPadが発売された当初こそ好調な伸びを示したものの、その後は減少傾向が続き、直近では半分近くまで落ち込んでいるらしい。

 そうした状況を憂慮してか、ソフトバンクモバイルは12月より公式ショップ「ソフトバンクショップ」でのiPad取り扱いを2,000店(これまでは100店舗強だった)に拡大するとともに、携帯機能が搭載されたモデルについて、2年契約を前提に端末代5万8,320円を実質0円にするキャンペーンを展開してこ入れを図ろうとしている。

 一方、タブレット端末市場への関心を示しているのはソフトバンクだけではない。11月末からはドコモがサムスン電子の「ギャラクシータブ」を投入したのに続き、シャープとソニーは電子書籍が読めるタブレット型端末を発売する。シャープが発売する「ガラパゴス」は、持ち運びできる5.5型と、家庭用の10.8型の2モデルを展開。電子書籍約2万冊のほか、新聞や雑誌も用意した。ソニーも「リーダー」を発売予定で、紙の本を読むように目が疲れにくい電子ペーパーを使ったのが特徴だ。

 注目度抜群のなか新たに誕生したタブレット端末市場だが、iPadの失速で第一幕は終わり、年末からはプレーヤー混戦のなか次の戦いがスタートすることとなる。

 来年初めにはiPadの新型投入も噂されているが、その関係者によると顧客に具体的な使い方を提案できるかが普及の鍵を握るとのことだった。

2010年12月2日木曜日

Column:復活の狼煙を上げたウィルコムの切り札投入

 ソフトバンクの傘下に入り、東京地方裁判所に提出していた更生計画が認可されたウィルコム再生の一歩として、毎月の基本料と別に980円の追加料金を支払えば同社の加入者同士だけでなく、他社の携帯電話や固定電話への国内通話も無料となる「だれとでも定額」を始めることとなった。12月3日より開始する。

 オプションサービス「だれとでも定額」(月額980円)に加入すると、ウィルコム以外の携帯電話や一般加入電話、IP電話への10分以内の国内通話が、月500回まで無料で利用可能となる。10分を超過した場合は利用料金コースに応じた通話料がかかる。500回を超過した場合は21円/30秒の通話料金となる。

 もともと同サービスは会社更正法の影響を受けないウィルコム沖縄が4月9日~5月31日(受付期間)の期間限定で提供した結果、5月末時点での契約数が2,500件純増の40,500件(対前月比6.6%増)を記録。全国的な反響の大きさから9月からは新たに北海道/宮城/広島で同様のサービスが試験という位置づけで提供されてきた。

 再生への道筋が二転三転し、ウィルコム自身が意思決定できる範囲が狭まるなかで、支援する親会社のソフトバンクは他社を含めた完全定額は世界初の画期的なサービスであるものの、一時的に加入者が増加しても採算割れが濃厚ということで、同サービスの商用化には消極的だったとされるが、あえてGoサインを出した理由に興味を抱く。

 勝手に推測すれば、再生にあたり何よりもピーク時(2007年7月の465万人)から100万弱の顧客流出という止血対策を優先する必要があったのではないだろうか。

 一方、複数の関係者からは、ソフトバンクによるウィルコム買収の狙いについて様々な意見を伺っているが、整理すると以下のようになる。
 ・370万の顧客基盤
 ・PHS基地局エントランス回線のSBTへのスイッチによるSBグループシナジー
 ・16万局のPHS基地局の携帯基地局向け用地としての活用
 ・周波数の獲得
 
 更生計画案では現行PHSを展開しているウィルコムへのソフトバンクの出資金額は3億円しかなく、ヒットしている「iPhone」の顧客獲得コスト約5万円/台という前提に立てば、決して悪くない買い物ではなかったか。

 もともとPHSサービスは、2000年から2004年までのKDDI時代は親会社との競合を敬遠され、データ通信を主軸にした展開を押し付けられながらも加入者を増加させてきた。2004年には米投資会社が買収し、独自のポジションを確立することに成功。しかし、その後ソフトバンクの音声定額、イー・モバイルのデータ通信定額サービスの攻勢を受け一気に失速。更には次世代PHS事業への投資負担も重なったことで経営悪化が表面化し、今年2月会社更生法の適用を申請した。

 このようにウィルコムの失敗は、弱肉強食のサバンナで体の小さい小動物が大型の肉食獣に狙われるがごとくという側面はあったにせよ、本質的な問題はコスト削減を優先するあまり、果敢に仕掛けていく力が弱かった(=無かった?)ことに尽きるのではないかと思う。

 言い方としては誠に失礼ながら、外部から社長を招いた一時期を除けば、PHSラブ(LOVE)な人達が集まり常に『守り』の視点で事業にあたっていたような・・・。

 その意味で、今回の新サービスはインパクトを持って市場では迎えられるのではないだろうか。新生ウィルコムの復活に期待したい。

2010年12月1日水曜日

Column:KDDI「IS03」ヒットの影で気になるネーミングの話題

 KDDI復活の切り札として投入したスマートフォン「IS03」が順調な滑り出しを見せているようだ。11月26日に発売となったが、同社によると、インターネット上で事前購入宣言した人の数が27万人に達しているとしている。

 同端末は、スマートフォンとしては初めて「おサイフケータイ」や「ワンセグ」など、これまで国内向けフィーチャーフォンに標準搭載されてきた機能が使えるのが大きな特徴で、和製スマートフォンの尖兵に位置づけられている。

 もっとも、27万人のうち新規契約と答えた割合は1割程度で、多くは他のau端末からの機種変更が占めているとされており、全く意地悪な見方だが、これまでKDDIには買い換えたい端末がなかったということの裏返しのような気がしないでもない。

 個人的には、ソフトバンクの「iPhone」「iPad」、ドコモの「Galaxy」などライバルはスマートフォンにクールなネーミングなのに、何故KDDIだけは「IS01」・・・「IS03」と型番のようなネーミングなのだろう???不思議だ。

 短距離走世界一のウサインボルトやレディーガガといった尖がった人を使ったクリエイティブを製作するのだから、もっと考えようもあったろうにと思ってしまう。

 伝え聞くところによると、端末を供給しているシャープは「ガラパゴス○○」としたかったらしいが、KDDIサイドの猛烈な反対にあったという話もチラホラ。

 いずれにしても、今回のヒットを本格的な回復軌道へつなげることができるか、12月からスタートする新体制に注目が集まることとなりそうだ。

2010年11月30日火曜日

Reserch Note:SIM解除がもたらす新たな競争サービス

 PM:ある通信キャリアとの定例ミーティングにて。

 2011年の移動体通信産業の大きな話題となりそうなのが、SIMカードの解除ではないだろうか。

 この問題では、総務省が2011年4月以降に発売される携帯電話端末で対応可能なものからSIMロック解除に応じるよう携帯通信各社に求めていたものの、各社の反発もありSIMロック解除は各社の自主的な判断に委ねる形に落ち着いた。結果、ドコモやソフトバンクモバイルなど携帯各社間で対応に“温度差”が生じる見通しだ。

 総務省としては、解除により端末開発の自由化や海外での利用拡大につなげたいという狙いがあったと見られる。ただ、SIMロック解除により、携帯端末を相互に利用できるようになるのは当面はドコモとソフトバンクだけとなる。KDDIは異なる通信方式を採用しているため各社がロックを解除してもKDDIの端末を他の通信会社の回線で使うことはできない。3社の完全な相互融通が可能になるのは、KDDIがLTEに対応する12年からだ。

 一方、これついて最も積極的な姿勢を見せているドコモでは、2011年4月より出荷する全ての携帯端末について、「SIMロック」を解除できるようにするとしており、携帯キャリア間の顧客争奪戦は更に激化することとなりそうだ。

 そうした競争状況を見据え、その関係者が注目しているのが「テザリング」だという。これが利用できるようになれば、例えばスマートフォンに搭載されている通信回線を使ってノートPCなどからネットに接続できるようになる反面、トラフィックが爆発的に増加することから、その点で携帯キャリアにとっては悩ましい機能でもあるという。しかし、端末OSサイドでは既にiPhone OSは 3.0以降で、Android でも2.2からはこのテザリング機能がサポートされているのだ。つまり、「テザリング」をやるかどうかは、携帯キャリアの胸三寸と言う状態にある。

 今年6月に開催されたソフトバンクの株主総会で孫社長が質問に答える形で「テザリング」について、以下のような見解を示している。

 「iPhoneユーザーは一般の10倍のパケット量の通信をしている。テザリング機能を利用可能にすると100~200倍のパケットを使うユーザーが出てくる可能性がある。定額料金で100人分の帯域を占拠させるわけにはいかず、提供することはできないという経営判断。通信料金が青天井ならばテザリング機能も容認する」

 しかし、2011年からはこうした事情に関係なく「テザリング」競争に突入するというのが、その関係者の見解で各社の次世代ネットワークへの張替えは高速化よりもトラフィック対策が重視されているとしている。

 その点では、ドコモのLTE「Xi」の料金体系が示しているように、今後は定額制の流れにも影響を与えていくことになるだろう。

 いずれにしても爆発的な急増が予測されるトラフィックをどのように封じ込めながら、競争優位に立てるか。来年は、足腰と相談しながらの体力勝負へ突入していくこととなりそうだ。

2010年11月23日火曜日

Column:スマートフォンによって変容するモバイル市場の構図

 和製スマートフォンとして注目を集める「IS03」が11月26日より発売されることが決まった。ワンセグやおサイフ機能、赤外線通信、Ezwebメールを搭載するほか、LISMO!やau one ナビウォーク、携帯電話向けソーシャルゲーム「サンシャイン王国」など独自サービスも移植されている。

 これまでスマートフォン市場では、先行する「iPhone」をドコモが4月に発売した「Xperia(ソニー・エリクソン)」と10月の「GALAXY S(サムスン)」が追撃する構図だったが、これに「IS03(シャープ)」が参戦する。

 量販店のPOSデータを集計しているBCNによると、10月のスマートフォンの比率は、過去最大の33.1%を記録したとしている。9月は27.8%だったが、10月に「GALAXY S」が投入されたことで、スマートフォンの比率が更に上昇した格好だ。

 BCNの集計対象店舗という条件付だが、携帯電話全体の販売台数に占める、32GBモデルと16GBモデルを合算した「iPhone 4」のシェアは21.1%と5台に1台は同端末ということになる。
 
 一方、10月の携帯キャリア別のスマートフォン比率では、「iPhone 4」効果でソフトバンクモバイルが71.9%と圧倒的だが、ドコモも23.6%と4台に1台はスマートフォンという計算だ。それに対し、出遅れたKDDIはわずか6.3%しかなく、今回の「IS03」投入によってどのくらいキャッチップできるか注目される。

 次にアングルを端末ベンダーに移すと、国内スマートフォン市場を牽引してきたのは、これまでは外資系端末ベンダーである。そうでなくても市場の収縮は加速しており、合併などで生き残りを目指している国内勢にとっては、スマートフォンの波に乗り切れていないことにじくじたる想いがあるのではないかと推察する。

 そこで、ここにきて国内端末ベンダーの雄であるシャープとパナソニックが相次いでスマートフォンに関する説明会を開催し、同事業の強化を鮮明に打ち出した。撤退するノートパソコンの部隊をスマートフォン開発に振り分けるとするシャープは、スマートフォンの国内販売台数を2~3年以内に年間500万台に引き上げ、約30%のシェアを目指す方針を表明。また、パナソニックは、2011年前半にAndroidスマートフォン投入し、2015年には海外市場を含め1,500万台の出荷を目指すとしている。

 スマートフォンの台頭が、国内端末ベンダー復活のトリガーになりえるのか、それとも・・・。モバイル市場の構図がスマートフォンによって日に日に変容しているように映る。

2010年11月19日金曜日

Column:モバイル&ワイヤレス市場で繰り返される携帯電話への『同質化』の流れ

 携帯電話の自由化前からマーケット分析をやっている身として感じるのは、モバイル&ワイヤレス市場の成長の影で常に携帯電話にその他の競合製品は影響を受けてきたということである。

 顕著な例を1つ取り上げればPHSである。もともと固定電話のコードレス版として開発され、端末と回線を分離し、インセンティブ型のビジネスモデルを否定してきたはずなのに、いざ商用化されると携帯電話の1つとして泥沼の競争に巻き込まれ、結果はご存知の通りだ。

 市場でもともとのPHSのコンセプトでは戦えず、そのまま突き進んでいったらもっと悲惨な結果に終わったという意見もあるかも知れない。しかし、それは誰にも分からないし、そこが本稿の論点ではない。

 事実は、携帯電話の土俵に引き込まれ、次々に投げ飛ばされていったということである。

 モバイル&ワイヤレス市場で絶対的な地位にある携帯電話の存在は、他の競合サービスを育ちにくくしているという負の側面かも知れない。

 そして、その流れで先日のニュースで気になったのが、モバイルWiMAXのUQコミュニケーションズが年間契約プランを条件に月額料金(3,380円)を引き下げる新料金プラン「UQ Flat 年間パスポート」を導入すると発表したことである。

 モバイルWiMAXのビジネスモデル上の特徴の1つは、「契約期間の縛りがない」という点にあったはずだ。今回、その‘禁じ手’を解禁してまで携帯電話で主流となっている契約期間で縛るカタチに近寄ってきたことにどういった狙いがあるのか、色々と想いを巡らす。

 健全な市場が続くためには健全な競争相手が必要だが、今となっては携帯電話はあまりに突出しており、その他の競合サービスが生存できる領域が少なくなっていることは間違いない。

 しかし、携帯電話への『同質化』はかつてPHSがそうだったように純増数など一時的な効果をもたすらすものの、長期スパーンで見ると、投与の仕方によっては産業そのものの根幹を揺るがす劇薬になる可能性があることも認識すべきではないだろうか。

2010年11月16日火曜日

Column:携帯キャリアの次の“姿”考察

 スマートフォン時代を迎え、これまで強弱の違いこそあれガチガチの垂直統合モデルで突き進んできた携帯キャリアのビジネスモデルが、次の『姿』を模索しているように見える。

 それを一言で表すなら「オープン型の垂直統合モデル」だろうか。

 そもそも日本の携帯キャリアは、通信インフラだけでなく、端末、サービス、プラットフォーム、そして流通を自ら一気通貫で手がけることで、独自の進化を遂げてきた。

 そうした生態系は、通信サービスと端末レイヤーが分離されていることの多い海外のケースと比較すると非常にユニークで、ガラパゴスと揶揄され、技術力がありながら海外市場で失敗続きの国内端末ベンダーの元凶ともされてきた。

 しかし、こと携帯キャリアというアングルから見る限り、世界的にも最も成功した収益モデルだったのではないかと思う。このカタチが携帯スタート時から導入されたことで、端末代をイセンティブで負担することが可能となり、利用者のイニシャルコストを軽減され、結果、加入者が一気に拡大していった。そして、端末とサービスを一体化して提供することでARPUの最大化を図ることが可能となった。

 通信サービスと端末が分離されていたら、こうはいかない。

 もっとも、これが深く、そして長く続いてきたことが海外からの国内携帯市場への参入を阻む防波堤となってきたことも事実である。

 時代は変わり、市場の成熟化が加速するなか、MNPの導入や端末と回線の分離販売、スマートフォンの台頭など、新たに市場環境を変化させる大波が次々と携帯キャリアの垂直統合モデルに襲いかかり揺さぶりをかけている。

 KDDIとサンシャイン牧場との提携やドコモのツイッターのダイレクトメールなどの到着をiコンシェルで通知するtwiコンシェルやスマートフォン向けにiモードメールのやり取りができるSPモードなど、プラットフォームを自らグリップしながら必要に応じてAPIを外部から叩ける機能を開放し、利便性を高めていくというやり方は、まさに携帯キャリアの次の姿を予感させる。

2010年11月14日日曜日

Research Note:通信業界で起きる中国脅威論

 AM:ある機器ベンダーとの定例ミーティングにて。

 世界を席巻する中国パワー。ことは通信市場においても同じである。

 成長著しい新興国を中心に携帯電話向けインフラ市場は言うに及ばず、携帯端末では今やグローバル端末ベンダーの一角を占めるポジションにまで急上昇してきている。

 国内マーケットにおいても、インフラではHUWEIがイーモバイルに、そしてソフトバンクには実験用だがLTE向けに機器を提供し、UQCが提供しているモバイルWiMAX向けではZTEかそれぞれ導入を果たしている。

 また、端末では流行っているWi-Fiルータやデータ通信カードのほか、最近ではスマートフォンにまてウィングを広げてきている。

 これまで、中国企業は日本に参入を果たしたものの、イーモバイルなど新興キャリアが主要顧客で、そういう意味ではまだ亜流の存在でしかなかった。

 しかし、今年に入り端末の一部とは言え国内通信業界の本流であるドコモとKDDIで端末が採用されたという事実は注目に値する。

 ところで、関係者に話しを聞くと、中国企業の商談スタイルはユニークらしい。日本では機器ベンダーはキャリアに採用してもらう為に、立場的には下手になり商談を進めていく。しかし、中国企業は「何故、こんな優秀な製品を購入しないのか」というスタンスで臨むのだという。そして、できる見込みがないことでも平気で「やれます」と返事するものだから、中国企業の日本人スタッフは慌てるケースが多いという。

 中国企業の機器や端末を採用したキャリアの担当によると、品質に対する考え方が全然違うことから国内企業と比べてやり取りは倍以上の苦労を強いられるとするものの、着実に日本へ根を張ろうとしている。

 最近、インドや米国では中国脅威論のなか、通信機器購入に際し政府からキャリアへ中国企業の製品を採用しないよう働きかけがなされているとされる。

 国家のライフラインとして位置づけられる通信サービスだけに、導入にあたってはコストだけでなく、国家防衛や機密保持の観点も大切になるということだろう。

 いずれにしても2011年以降、世界そして国内通信市場において中国通信企業の存在感が増すことだけは間違いなさそうだ。

2010年11月11日木曜日

Column:モバイルの世代交代の呼称を巡る混乱

 3Gから3.5G、そして3.9G、4Gへとモバイル技術の世代交代が目まぐるしい勢いで進んでいる。バージョンがアップすることで、通信速度が高速化され、先進的なサービスを享受できるようになる。

 現在、日本では3GであるW-CDMAとCDMA2000技術をベースとした拡張システムが導入され、今年12からはドコモが3.9Gと呼ばれる「LTE」の商用化に踏み出す。

 こうした呼称について、米国では全国レベルのサービスを提供している携帯キャリア4社の1角であるT-Mobileが"3G"の「HSPA+」技術を「全米最大の4Gカバーエリア」と表現したことをライバル各社が非難する騒ぎとなっている。

 もともとT-Mobileは、iPhoneで加入者獲得に成功しているAT&Tの弱点である貧弱な通信ネットワークを揶揄する意味もこめてHSPA+サービスを「4G並みの速度」と表現してきたが、今回は明確に「4Gサービス」とアピールしているのだ。

 こうしたなか、実はもう1社米国には4Gを標榜しているサービスがある。クリアワイヤとスプリント・ネクステルが提供している「WiMAX」だ。もともと同事業はスプリント・ネクステルが「XOHM」という名称で展開していたものの、資金難から2008年WiMAX専業サービス事業者のClearwireへと移管し、更にはインテルやケーブル会社など新たな株主から資金調達する形で再出発が図られた。しかし、早くも今月に再び資金難から、従業員の15%を削減するリストラ策を発表するなど、先行き不透明となっている。

 対して日本では「LTE」は3.9Gだが、同レベルのスピードを発揮するイー・モバイルやソフトバンクの「DC―HSDPA」を同じように3.9Gや4Gと表現する向きはあまりないように思う。

 3.9Gや4Gといった呼称は、「スピード」だけではなく、より広い「技術革新」を指すものという共通認識の差なのかも知れない。

2010年11月9日火曜日

Column:「ストップ・ザ・iPhone」で迎える秋冬商戦

 携帯3社の秋冬端末が出揃った8日、TCAより10月末の携帯電話・PHS契約数が発表された。

 純増競争ではソフトバンクモバイルが2位に5倍以上の大差をつけ、7カ月連続の首位を獲得した。

 ソフトバンクの純増数は32万4200件、2位のイー・モバイルは6万800件、KDDI(au)は5万8400件で、最下位はNTTドコモの5万7700件だった。また、モバイルWiMAXを提供しているUQコミュニケーションズの純増数は3万6200件で、会社更生手続き中のウィルコムのPHSは4万1900件の純減だった。

 ソフトバンクでは相変わらず「iPhone」が好調で、2位のイー・モバイルはWiFiルータが顧客獲得に貢献した。それに対してドコモは「GALAXY S」、KDDIは「IS03」という戦略商品を投入するも、実際の発売時期は11月からと10月の純増にはほとんど寄与しなかったことが響いた格好だ。

 MNP競争ではソフトバンクが8万8000件の転入超過(プラス)となる一方、ドコモが5万2500件、KDDIが3万4800件、イー・モバイルが900件の転出超過(マイナス)となった。

 10月の端末タイプ別の動向(独自推計)としては以下の通り。
◎ソフトバンク-純増の7割弱をスマホ&フィーチャーフォンが占め、約2割を通信モジュール系となっている。
◎イー・モバイル-引き続きスマホ&フィーチャーフォンタイプの減少が続くなかで、WiFiルータを含む通信カードとプリペイドが純増を押し上げている。
◎KDDI-従来のフィーチャーフォンタイプの純増が減少傾向にあるなかで、通信カード&通信モジュールがコンスタントに数字を獲得している。
◎ドコモ-スマホ&フィーチャーフォンタイプが純増の半分以上を占める一方で、これまで同社の純増を牽引してきた通信カード系が急減。

 携帯キャリア別の地域別動向としては以下の通り。
◎ソフトバンク-純増数の内訳:首都圏59%、関西15%、東海10%、他15%
◎KDDI   -純増数の内訳:首都圏46%、関西14%、東海 9%、他31%
◎ドコモ   -純増数の内訳:首都圏66%、関西 7%、東海 -%、他27%
 *ドコモ東海エリアについては、今回200回線の純減だった。

 今年の秋冬商戦では、3社で70機種以上(ドコモ28機種/KDDI23機種/ソフトバンク24機種)の新端末が投入され、顧客獲得競争を繰り広げることとなる。

 新端末発表で先行したKDDIとソフトバンクがAndroid新機種を中心に据えたのに対し、ドコモはスマートフォン(AndroidおよびBlackBerry)、iモード端末(=フィーチャーフォン)、LTEサービスの3分野をバランスよく配分しながら、他社にない独自端末を数多く取り揃えてきた。

 更にドコモの端末発売予定を見ていると2011年3月に確定しているものは1機種もないことから、時期を見て隠し玉の投入もありそうだ。

 注目を集めるスマートフォンについては、これまでのような高機能型だけでなく海外の廉価版も投入されてくるあたり、今後はフィーチャーフォンとスマートフォンの融合が加速していくと予感させる。

 「ストップ・ザ・iPhone」で一斉に動き出した秋冬商戦の熱い戦いがはじまった。

2010年11月5日金曜日

Column:下り最大42Mpsの「EMOBILE G4」を発表したイー・モバイルの戦略メモ

 データ通信の高速化でライバルをリードしてきたイー・モバイルが、11月19日より下り最大42Mps/上り最大5.8MbpsのDC-HSDPAサービス「EMOBILE G4」を開始すると発表した。

 通信料金は現行の毎秒21Mbpsのサービスと同じに据え置いた。月額固定の「G4データプラン」で2年の継続利用を前提とした「ベーシック(にねん得割)」が月額5,280円など。

 当初は関東、東海、関西、北海道、九州の一部主要都市での提供となるが、その後エリアを広げ、2011年3月末には約40~50%の人口カバー率を目指すとしている。「EMOBILE G4」以外のエリアでは、既存のHSPA+などとバックコンパチで対応可能となっている。

 2007年3月にデータ通信専業型キャリアとして3.6Mbpsのデータ定額制を武器に参入を果たしたイー・モバイルは、常にライバルを上回るデータ通信サービスをいち早く導入(2007年12月に7.2Mbps、2009年7月に21MbpsのHSPA+)することで、弱点であるエリア整備をカバーし戦ってきた。

 PCとデータ通信カードをセットにした100円PCや、PCやPDA、携帯型ゲーム機などを無線LAN経由でインターネットに接続できるモバイルルーター「Pocket WiFi」などのヒットで、開業1年目は約100万、そして2年目は約95万の純増数を獲得し、累積加入者数は2010年9月末時点で274万件まで増加。

 開業当初、調達していた資金から現在の加入者数を換算すると加入者一人あたり約3万円の獲得コストと、効率性は決して悪くないものの、端末代を肩代わりし通信料金で回収するモデルは、資金力に限界のあるベンチャー企業にとって楽な仕組みではない。その点、端末を割賦にし債権として早期に現金化できるソフトバンクの開発したモデルは秀逸である。

 そうした背景もあり、今年親会社であるイー・アクセスとの合併に踏み切ったと見られるが、とわ言え、まだ300万レベルの加入者数しか持たない携帯キャリアという言い方もできる。

 12月にはドコモがLTEの商用化を計画しているが、W-CDMAの延長技術であるDC-HSDPAで対抗するあたり、性能がLTEと変わらず、更にはその先の高速化技術も開発されてきているDC-HSDPAの方がコスト面でも十分対抗できるとする読みがあるのではないかと思われる。

 今回、サプライズでAndroid搭載のスマートフォン「HTC Aria」投入が発表されたものの、コンテンツやプラットフォームも手がける総花的な携帯キャリアを目指すのか、それとも堅牢な通信ネットワークを提供する土管屋に徹するのか、その決断の時期もそう遠くないように思える。

2010年11月2日火曜日

Reseach Nopte:『アップルの独自SIM開発報道』で改めて注目される端末ベンダーの強さの意味

 PM:世界の移動体通信産業を調査している研究者との意見交換にて。
 
 米IT系有力ブログのひとつ「GigaOM」が、欧州市場向けにiPhone用の独自SIMカードの開発をオランダのカードメーカー、ゲマルト(Gemalto)と共同で進めていると伝えた。

 これががあれば、顧客はアップルから店舗やWeb経由でiPhoneを購入して、購入時に携帯キャリアを選択できるようになる。つまり、通常は携帯キャリアが行うアクティベートをApp Storeからのダウンロードでできるようになるのだ。

 独自SIMには、アップグレード可能なフラッシュコンポーネントとROMエリアを備えたチップが埋め込まれている。ROMエリアには、キャリア関連の情報を除いて、ITやネットワークセキュリティに関してGemaltoが提供するあらゆるデータが含まれ、同社がは、キャリアのネットワーク上でサービスと電話番号を供給できるバックエンドインフラを提供する。

 世界の通信トレンドの1つが、iPhoneの登場以降、NokiaのMeeGo、Hewlett-PackardはwebOS、そしてSamsungはBadaというように、端末とソフトの垂直統合化にある。そうしたなかで、今回の報道の真偽のほどは別にして、仮に事実ならその流れを更に一歩進めることとなりそうだ。

 翻って日本ではどうか。海外の携帯キャリアと比較し、プラットフォームやコンテンツまで手がけ「ガラパゴス」と呼ばれるほど、国内端末ベンダーの国際競争力に影響を及ぼすほど、垂直統合化によるエコシステムを構築してきたことは周知の事実だろう。

 その観点から、実はこうしたグローバル端末ベンダーと相性がいいのは、周波数帯の問題はあるにせよ、上位レイヤーを持たないイー・モバイルだったりするのではないかと思ったりもするのだが、言いすぎだろうか。

 先日、移動体通信のグローバル市場を調査している外国の研究者と意見交換をしたのだが、その席で「何故、部品技術であれだけ優れている日本の端末ベンダーは、海外で活躍できないのか?」と聞かれ、答えに窮した。

 その方によると、国際市場で戦うには、いい商品や部品を作ること以上に誰か(携帯キャリア)におもねるのでなく、自ら道を切り開く‘強さ’を持っていることが絶対条件になるとしている。
 
 今一度、‘強さ’の意味を考えさせられた。

2010年10月31日日曜日

Column:スマートフォンへの踏み込み具合が差となって表れた携帯3社の中間決算

 携帯大手3社の中間決算が出揃った。2010年度2Qの結果は下記の通り。
        
 -NTTドコモ:減収増益/純増数 81万/ARPU5,200円(前年同期比-220円)
 -KDDI:減収減益/純増数 42万/ARPU5,100円(前年同期比-500円)
 -ソフトバンク:増収増益/純増数160万/ARPU4,300円(前年同期比+150円)

 2008年よりiPhoneを投入し、スマートフォン時代をリードするソフトバンクは、純増数×単価の両面で増収増益を記録。移動体通信事業の営業収益は、前年同期比13%増の9,400億4,400万円、営業利益は前年同期比57.3%増2,072億300万円だった。純増数では前年同期比の68万から160万へ大きく増加させ、ARPUは4,300円と前四半期から150円増加した。なかでも特筆すべきは、データARPUが前年同期より300円増加し、データARPUと音声ARPUが逆転したという点である。今後10年以内にウィルコムの加入者を含め(合計で約2,800万)、ソフトバンクモバイルで4000万回線の獲得を目指す方針が明らかにされた。

 これに対してドコモは、前年同期は減収減益だったが、今期は減収増益を確保するなど、回復基調へ転じつつある。営業収益は2兆1,382億円で同0.4%減、営業利益は5,315億円で同9.5%増だった。最大の加入者数を抱えるだけに、構造的に純増競争では不利であるものの、そこはリテンション対策の強化で純増数を確保し、動画や電子書籍サービスを強化することで、伸びシロがまだある定額制(加入率58%)への移行を推し進めARPU上昇を狙っている。下期は、「スマートフォンのラインアップ拡充や定額制ユーザーの拡大、フィーチャーフォンユーザーのパケット利用の促進、モバイルW-Fiルータや通信対応フォトフレームなどの新デバイス投入によって、更なるデータARPUの向上」を目指す。そして新たな取り組みとして電子書籍やカーナビサービス、LTEの商用サービスにも注力する考えだ。

 KDDIは、前年度の純増数(2009年度上半期39万)と比較すると今期は42万と増加傾向にはあるとは言え、依然ライバルとの差は大きい。移動通信事業の営業収益は前年同期比2.4%減の1兆3,052億円、営業利益は同9.0%減の2,477億円の減収減益だった。取り組みが遅れたスマートフォン投入やシンプルコースへの移行拡大にともなう音声ARPU減が続いており、今期は前年同期比500円のマイナスと最も大きい下げ幅を記録した。下期は、新社長の体制のもと、「スマートフォンの強化と電子ブックリーダー、Wi-Fiルーター、タブレット型端末等の新たなデバイスを積極投入」「データ利用推進、データARPU向上に向けた取り組みのさらなる推進」で失地回復を狙う。
 
 各社の決算を総括すると、今回はスマートフォンへの踏み込み具合の差が大きく結果に反映したカタチとなった。ところで、スマートフォンが業績に影響を与える状況というのは国内だけの話ではない。ノキアなどグローバル端末ベンダーもスマートフォンの行方が業績を左右しており、今や世界的な流れとなっている。個人的には、LTE商用化を前に、こうした話題がここまで脇に追いやられた感のある状況に、いささか寂しさを感じてしまうのだが。

 自らの土俵にライバルを引き込むソフトバンクの戦い方に、各社がどのように挑んで行くのか、2010年度下期から次世代モバイルネットワーク時代の新たな競争の幕が開こうとしている。

2010年10月28日木曜日

Column:AP不要で機器間をWiFiで接続する「Wi-Fi Direct」

 Wi-Fi Allianceは10月25日、Wi-Fi対応機器同士をダイレクトに接続するWi-Fi新仕様「Wi-Fi Direct」の製品認証開始を発表した。第一弾として、5製品が「Wi-Fi CERTIFIED Wi-Fi Direct」として認定される。

 PC、携帯電話、デジカメ、プリンタなどから、キーボードなどWi-Fiが搭載されている機器(IEEE 802.11 a/g/n)が対象になり、通信速度や通信範囲はWi-Fiと同じで、セキュリティ技術「WPA2」をサポートする。

 「Wi-Fi Direct」が注目される点が、どちらか一方の機器がWi-Fi Directに対応していれば、もう一方は非対応でも通信できるということ。

 これによって、下記の例のような新アプリケーションが期待される。
 ・デジタルカメラとプリンター間で写真を転送し印刷する。
 ・携帯電話内の写真をテレビに転送し表示する。
 ・PCとiPhoneやiPod touch間でデータ同期を行う。
 更に、デザリング機能が使えるようになれば、インターネットを搭載したPCを介して例えばiPod touchからネットに接続するといった使い方も可能となる。

 同技術に似たワイヤレス技術としてBluetoothや無線LANルーター、アドホック無線接続を使えば似たようなことは実現可能だ。

 しかし
 ・Bluetoothは転送速度が遅い、接続距離が短い
 ・無線LANルーター、アドホック無線接続は、接続設定が手間
 といったデメリットがある。

 Wi-Fi Allianceによると、2010年に8200万台のWi-Fi対応家電製品と2億1600万台のWi-Fi対応ハンドセットが出荷され、2014年までWi-Fi対応機器は年率26%で増加していくと予測している。特に近年は携帯電話へのWi-Fi搭載が急増しており、2009年に出荷されたWi-Fi対応機器の4分の1は携帯電話だった。

 Wi-Fiと携帯の融合化によって、新たな無線アプリケーションが今後創出されていきそうだ。

2010年10月26日火曜日

Column:3.9Gの本格競争前に早くも選定された4Gの技術規格

 国連機関の国際電気通信連合(ITU)は10月22日に4Gの携帯電話規格に「LTE」と「WiMAX」の両方式の発展型を採用することを決定した。ITUは2011年中に2つの規格の詳細を定め、2012年に正式に勧告を出すこととなっている。

 4Gは新幹線などで高速移動中でも通常の光ファイバーと同レベルの最大毎秒100Mbpsで受信でき、低速時には最大1Gbpsの超高速通信も可能とされている。

 実用化の時期に関しては、2015年以降と見られているが、国内ではLTEの普及を当面の課題と位置づけており、本格的な4G時代は2020年前後までずれ込むとの見方もある。

 LTEの展開では、今年12月にドコモが商用サービスを開始し、2012年7月にはソフトバンクモバイルが、12月にはKDDIがそれぞれ追随する予定だ。ドコモ以外はLTEの展開が2年程度遅れる訳だが、その間ソフトバンクとイー・モバイルは、現行設備を最大限に活かし下り最大42Mbpsを実現する「DC-HSDPA」で、そしてKDDIは下り最大9.2Mbps/上り最大5.5Mbpsの通信が可能となるEV-DOマルチキャリアやUQコミュニケーションズのモバイルWiMAXで対抗する構えだ。

 高速通信が「売り」のLTEだが、当初のデータ通信速度は、最大75Mbpsとなっているものの、これは一部屋内エリア限定で、屋外では37.5Mbps程度とされている。つまり、LTEでドコモが先行したとしても、通信速度では他社もあの手この手で十分に対応可能と言うことになる。

 まさに、これから3.9G時代の戦いが始まろうというタイミングにあり、4Gはその先ということになる。しかしながら「LTE」VS「モバイルWiMAX」という観点からは、今世界で繰り広げられる技術規格でどちらが大勢を占めるかということが、4G本格化の際にデファクトを勝ち取るために大切な要件だ。

 その意味から言えば、現時点では採用している通信キャリア数、対応端末などから、LTEが圧倒的に有利なポジションを占めている。LTEは国内キャリア4社全てが採用する他、世界的にも米国のAT&Tやベライゾンワイヤレス、英ボーダフォンなどの大手が採用を表明済みだ。

 これに対してWiMAX陣営では、国内ではKDDI系のUQコミュニケーションズが採用するが、海外では大手通信会社の採用が少なく、一部通信会社ではLTEへの乗り換えを示唆するような動きも出ている。

 劣勢を挽回するため、WiMAXは2012年に下り最大330Mbpsの「WiMAX2」を投入することで、高速化競争をリードしたい構えだ。

 更にここへきて、上記2規格に加え、同じLTEでも送信と受信で同じ周波数を使う「TD-LTE」と呼ぶ規格も勢力を拡大している。中国最大手のチャイナモバイルのほか、インドでも一部の通信事業者が採用を表明しており、将来的に一大勢力を築く可能性が高い。
 
 思いのほか早い段階で4Gの規格が決まったことで、今後機器の開発競争が激化することは必至の情勢で、グローバル市場を見据えた戦略策定が本格化していきそうだ。

2010年10月25日月曜日

Column:ライバルの本格参戦を前に布陣の再構築迫られている?iPad陣営

 ここ数日、iPadが想定された数よりも販売量が達していないのではないかと思わせる複数のニュースが出てきている。

 まず、意外だったのがアップルの2010年7月-9月期のiPadの販売量である。同社の決算資料によると420万だったが、これは大方のアナリストが予想していた500万台超えを大きく下回るスコアだった。

 国内でも情勢は似ている。アップル及びソフトバンクは、iPadの販売量について一切明らかにしていないので、あくまで推測の域を出ないが、複数の販売店によると発売当初こそ大きく前月を上回ってきたものの、最近ではカーブは下降線を辿り始めているとしている。

 私の周りで最近iPadを購入した複数の人も、店頭で「在庫僅少」や「在庫無し」と張り紙に書かれてあるので取り寄せ覚悟で購入したい旨を伝えると、奥から出てきたという話をしていた。

 これまでアップルとの蜜月でiPhoneに続きiPadの販売は、ソフトバンクが独占的に取り扱ってきたが、最近IIJがiPad(無線LAN搭載版)の代理店として新たに認定を受け、今後ドコモの3Gが搭載されたモバイルルータとセット販売を行うとするニュースが流れた。

 また、ソフトバンクもiPadの販売店舗を10月より全国98店舗のソフトバンクショップへ広げるとしている。恒例のソフトバンクが開催した法人向けイベントで孫社長のメインテーマはiPadだった。

iPadが売れすぎて嬉しい報告だったのか、それとも不振を目のあたりにして営業の尻を叩く必要があったのだろうか?

 ドコモやKDDIなど各社がタブレット端末を投入し、まさに顧客争奪戦が始まろうする前からiPadが失速してはどうしようもない。iPadサイドにとっては、布陣の再構築を迫られているというところなのかも知れない。

2010年10月18日月曜日

Research Note:携帯キャリアの新たな収益モデルとしても注目集める電子書籍サービス

 PM:あるMVNOキャリアとの定例ミーティングにて。

 スマートフォンや「iPad」などタブレット端末の普及とともに、2010年度は電子書籍サービス元年となりそうだ。

 「iPhone」「iPad」を擁するソフトバンクが、6月より30以上の雑誌や新聞を定額で読むことができるコンテンツ配信サービス「ビューン」を開始したが、その後1ヵ月遅れでKDDIがソニー、凸版印刷、朝日新聞社らと4社で、更に1ヵ月遅れでドコモが大日本印刷とそれぞれ電子書籍配信事業に関する事業企画会社を立ち上げると発表した。

 ドコモはXperiaなどのスマートフォン向け電子書籍配信サービスの提供に向けて、10月下旬~12月下旬にかけてトライアルサービスを開始する。コンテンツは、雑誌や書籍、コミック、写真集など約50タイトルが用意され、いずれもトライアル期間中は無料で提供される。またKDDIは、12月にも電子書店を開設する計画だ。

 両社の電子書籍サービスで、ポイントとなるのが大日本印刷と凸版印刷という大手印刷会社2社の存在だろう。これらは電子書籍事業の環境整備について協調していくことで合意しており、2010年7月には両社を発起人とする「電子出版制作・流通協議会」が設立されている。

 同協議会では、様々な端末に対応可能な「中間フォーマット」の標準化などを行う予定となっており、これによりドコモとKDDI向けにコンテンツ開発の面でやりやすくなると見られている。

 一方、MVNOキャリアの担当者は、電子書籍を巡る動きのなかで、携帯キャリアの収益モデルに注目しているとする。

 同サービスでは、先行するアップルがiTunesの課金システムを利用する際に、売上金額の30%を手数料として得ているとされるが、これに対してドコモサイドでは、「少し高いのでは」としている。

 同社では、「利用者に通信料金を意識させない課金モデルはユーザーにとっての利便性を考えると非常に大事な点。解決すべきことが多いが重要事項として検討している」とコメント、従来型の基本料+通信料金という収益モデルを適用しない可能性もあるとしている。

 また、KDDIサイドは、書籍代は月々の通信料金と一緒に請求。専用端末の通信機能はデータ取り込みの際にしか使わないため、通信料金には数百円程度の定額制を導入する公算が大きいとしている。KDDIは利用者からの通信料収入に加え、出版社からも手数料を得るとされる。 

 おそらく、収益モデルについては、成功を占うキモになるところもでもあり、ギリギリまで検討が行われることになるだろう。MVNOキャリアの担当者としても仮に新たな収益モデルが導入されるということになれば、収益モデルがネックとなり普及が進みにくかった分野が花開くきっかけにもなり、その影響は決して小さくないとしている。その意味でも中身が気になっているようだ。

2010年10月17日日曜日

Column:国内でも導入進む?VoIP搭載の動き

1.KDDI‘禁断のアプリ’はスカイプ?
 日経新聞の報道によると、KDDIが11月下旬に発売する「IS03」に‘禁断のアプリ’と自ら評したスカイプが搭載されるという。

 以前より噂されてきた機能であり、目新しさよりも「ついにきたか」と思われた方が多いかも知れないが、18日に同社は新製品の発表会が予定されており、明らかにされる可能性がある。

 以下、最近の携帯電話へのスカイプ搭載の動向について検証していきたい。

 国内の携帯キャリアでは、既にスマートフォンのWiFiを使ったスカイプは広く利用されているが、報道で注目されるのは3Gという携帯電話網を使ってサービスが提供されるという点だ。

 通信料収入の半分を占める音声サービスで、スカイプが利用されるようになれば、減少の一途を辿っているARPUへの影響は避けられない。

 しかし、(仮にKDDIがスカイプを導入するとすれば、)それを覚悟しても導入するところに、KDDIの苦しさを感なくもないが、その一方で既に音声定額サービスの利用が広く普及していることから、影響は限定的という判断もあると推測されること。

 更には、長いタームで市場や技術のトレンドを俯瞰すれば、スカイプ(=VoIP)の携帯導入の道は避けようがなく、それならいち早く導入し、その分野で先行するほうが得策という見方もできる。

2.スマートフォン登場がスカイプ普及の背景
 もとより、インターネット電話の最大手であるスカイプの目標は、携帯電話へ搭載されることにあった。キックオフは、「3GSM World Congress 2006」において発表された戦略発表からだろう。

 その席で同社は、全世界で3Gサービスを提供しているHutchison 3グループとの提携を明らかにし、オーストリア,オーストラリア,香港,スウェーデン,英国,イタリアで実証試験を実施し,2006年中には正式にサービスを開始するとしたのだ。

 その後、2007年10月にはスカイプ携帯電話「3 Skypephone」を発売したものの、その他の携帯キャリアからはスカイプ導入は自社の通信料収入を破壊する、まさに‘禁断のアプリ’として総スカン状態だった。

 潮目が変わるきっかけとなったのが、スマーフォンの登場である。2009年2月、ノキアは携帯電話にSkype機能を組み込むことで提携し、第一号として2009年第3四半期よりS60搭載のNseriesに搭載すると発表した。

 そして、これまでスカイプ搭載に背を向けてきた携帯キャリアでも、2010年10月に米国AT&Tが、iPhone向けの3G携帯電話ネットワークをインターネット電話アプリケーションに開放すると発表したのに続き、2010年3月には米国最大の携帯キャリアであるベライゾンワイヤレスがスカイプと提携し、iPhenoを除く各種スマートフォンでスカイプアプリを搭載することとなった。

 3.iPhoneへのスカイプ搭載は2転3転
 世界で最も普及しているiPhoneへのスカイプ搭載は、先に述べている通り、米国AT&TがiPhone向けの3G携帯電話ネットワークをインターネット電話アプリケーションに開放すると発表したものの、その後頓挫している。

 スカイプは2010年7月にiPhone向け「スカイプ」アプリで3G回線を使った通話に課金する計画を示していたが、この決定をマイナーアップデート(新バージョンは2.0.1)で取り消してしまったのだ。

 背景には、長く続くスカイプとAT&Tとの確執が伝えられている。しかし、その後米国では米規制当局の連邦通信委員会(FCC)が調査に乗り出しており、早晩解決する可能性もある。

 いずれにしても、Hutchison 3のような新興キャリアではなく、米国の大手携帯キャリアで搭載の動きがはじまった意味は大きく、スカイプにとっては前進であった。
 
 4.似て非なる類似サービスは既に撤退
 今回、仮にKDDIがスカイプ搭載を加速させていけば、間違いなくライバル各社も追随してくるものと推測される。

 データ通信上でVoIPが提供されることで、常時接続が実現し、友人や同僚のオンライン接続状況を知ることができるなど、これまでの音声サービスにないサービスが開発される可能性もある。

 その一方で、機能的には異なるものの、内容的には似たトランシーバ型の音声定額サービスをドコモでは「プッシュトーク」、KDDIでは「Hello Messenger」という名称で投入したものの、共にサービス停止に追い込まれた歴史を持っている。

 導入以上に、サービスイン後の利用度が気になるところではある。

2010年10月14日木曜日

Column:動画サービス本番へ向けコンテンツ&技術プラットフォームで準備進む各社

 先日、ドコモが米パケットビデオを完全買収した旨のニュースが発表された。パケットビデオは、携帯電話向けのマルチメディアソフトなどの技術を保有する企業で、ドコモのFOMA端末90機種以上で、パケットビデオの製品「CORE Player」が搭載されている。

 ドコモは、2009年5月から有料の動画配信サービス「BeeTV」を提供しており、月額350円というリーズナブルな値付けから会員数は、2010年6月時点で125万に達するなど、これまで『不毛の地』とも揶揄されてきた動画市場で着実な成果を挙げている。

 今回のパケットビデオ買収についても、更なる動画サービス強化へ向けコア技術を確保しておきたいという狙いがあったものと推測される。

 しかし、こうした動画サービス強化の流れは、当然だがドコモだけに見られるわけではない。

 iPhone/ipadを擁するソフトバンクでは、以前よりお笑い動画コンテスト「S-1バトル」を提供しているが、2010年に入ってからだけでも8月から無料動画が楽しめるiPhoneアプリ「選べるかんたん動画2010」やセルラー網向けではないが、WiFiネット専用で「ケータイWi-Fiチャンネル」も用意されている。

 そして、5月には米UstreamとUSTREAM Asiaを設立することで合意し、iPhoneでUstreamの中継を視聴できるアプリや、中継を配信するためのアプリの提供も予定されている。

 コンテンツと技術プラットフォームの両面から着々と準備を進めている2社に比較すると、KDDIの動画事業が見えにくい印象を受ける。しかし、KDDIにはJCOMという隠し玉があり、今後同社が持つスポーツや音楽、アニメなど豊富なコンテンツを生かした動画サービスが提供されるようになれば、十分に勝算もありそうだ。もともとEZチャンネルやEZムービーなど、動画サービスでは先行してきたが、ここ数年は固定網との連携などやや異なる路線を志向してきた。

 各社の動画サービス強化へ向けたアプローチは、それぞれ異なるものの、課題であるARPU拡大の切り札となること、無線ブロードバンドの次世代モバイルサービスが控えているだけに一層注力されていく分野であることは間違いない。

2010年10月12日火曜日

Research Note:LTE商用化へ向けモバイルルーター「BF-01B」を大判振る舞いするドコモ

PM:ある量販店関係者との定例ミーティングにて。

 ドコモがモバイルWi-Fiルータ「BF-01B」を9月25日より発売した。同端末はもともと2010年6月24日に発売されたバッファロー製「ポータブルWi-Fi」を、今回ドコモブランド商品としてドコモ取扱店で販売するもの。

 ポータブルゲーム機やタブレット端末などのWi-Fi対応機器をFOMA網で利用できる。公衆無線LANにも対応しているほか、LAN端子を備えた同梱の専用クレードルを用いることで、自宅のブロードバンド回線からもインターネットを利用できるようになっている。

 そして、同端末の特徴が、最適な無線方式を利用者に意識させることなく自動で選択する「コグニティブ無線」機能を搭載していることだ。連続通信時間は6時間、連続待受時間は30時間。

 ドコモでは「BF-01B」の発売に合わせて、定額データプラン新規契約者の月額利用料の上限を1年間1,575円割引する料金割引キャンペーンの内容を拡充し、9月30日までの受付期間を12月31日まで引き伸ばす。さらに、10月1日から12月31日までに、ドコモのプロバイダオプション公衆無線LANサービスを新規で申し込んだユーザーの月額使用料315円を1年間無料にする。

 このところ店頭でのモバイルルーターの売れ行きが好調で、店舗によってはデータ通信カードを凌ぐ人気となっている。そして、今回ドコモがキャンペーンを12月まで延長した背景には、LTE商用化(12月)まで引き伸ばし、加入者拡大ペースを切らしたくないという思惑が見え隠れする。

 その関係者によると既に店頭では、「BF-01B」発売に合わせ新規契約向け端末代金0円で、更にキャッシュバック1万円もついてくるというのだから、同社の力の入れ具合が伺い知れる。

2010年10月9日土曜日

Column:秋冬端末発表前に吹き荒れるiPhone/ipad旋風

 10月7日、TCAより9月末の携帯電話・PHSの事業者別契約数が発表された。

 同月の純増数は60万1,900で、そのうちの55%をソフトバンクモバイル(SBM)が獲得した。

 3月末の2Gサービス解約者増加に伴い一時的にトップをドコモに奪うも2010年度に入ってからは、他を全く寄せつけない強さを見せている。

 なかでも2010年度の状況は、これまでといくつの点で異なっている。具体的には以下のような点だ。

①市場は年々新規のパイが減少してきているにも関わらず、2010年度の半期純増数は322万と、前年同期の215万を大幅に上回っている。
②市場を牽引しているのはSBMで、同社だけで毎月20万以上の純増を獲得している。
③SBMの純増のうち、最近顕著なのがMNPで流れてくる顧客数が多い。ここ3ヶ月は7万/月以上。
④ドコモはその規模から以前よりMNPの流出超が続いているが、2010年度に入ってからはKDDIも同じ状況に陥っている。
⑤KDDIの純増の牽引役は、これまでEZWebを搭載したフィーチャーフォンだった。しかし、2010年度に入ってから同タイプの月純増数までマイナスに転じている。
⑥これまコンスタントに純増を獲得してきたイー・モバイルの月別純増数のペースがやや陰りが見える。

 つまり、市場ではSBMのiPhone/ipad旋風が吹き荒れており、ライバル各社はその影響をもろに受けている格好だ。

 下期から各社はスマートフォン/タブレット端末の一斉投入を計画しているが、強い防波堤やタイフーンとなれるか、秋冬端末の発表は間もなくだ。

2010年10月4日月曜日

Reserch Note:ドコモ公衆無線LAN無料化に観る地殻変動の予感

 AM:ある端末ベンダーとの定例ミーティングにて。

 ドコモが10月より公衆無線LANサービスの月額使用料が1年間無料になるキャンペーンをスタートした。

 12月末までの新規契約者が対象で、同社のインターネット接続サービス「mopera U」のオプションサービスとして提供している「U『公衆無線LAN』コース」の月額使用料を1年間無料にするというもので、対象は期間内の新規契約者となっている。

 ドコモの公衆無線LANサービス「Mzone」は全国に3,100カ所以上設置されており、駅やカフェ、ファストフード店などで、ベストエフォートの最大54Mbpsで通信が可能となっている。

 スマートフォンやタブレット端末のラインナップが一気に揃う秋冬端末の発表を前に、携帯より高速な公衆無線LAN網を開放し、加入者拡大につなげたいとい狙いがある反面、通常の携帯端末の数倍とされる大容量のトラフックをさばくには携帯網以外のオフロード先を予め確保しておく必要性に迫られているという事情もあるようにも思える。

 いずれにしてもスマートフォン時代を迎え、通信ネットワークは無線LANと同レベルのスピードを叩き出す3.9Gへスイッチしていくにせよ、もはや携帯キャリアにとってセルラー網だけに頼るインフラ戦略は限界に来ているということだろう。

 そして、それはiPhone/iPadのヒットで加速度的にトラフィック収容量が増加しているソフトバンクが新規契約者にFONのWiFiルーターを無料配布していることからも伺い知ることができる。

 ところで端末のトレンドが、いわゆるガラケーと言われる携帯キャリア仕様から国際標準のスマートフォンやタブレットへ移っていくことは、ARPUと言う側面からは、今後も収益拡大の可能性という意味で大きい。しかし、その反面これまでのiモードのようなプラットフォームの主導権は携帯キャリアが取りにくくなっていくことは間違いない。

 ある端末ベンダーの担当者によると、「国内で投入されるスマートフォンは、国内限定仕様でないから社内で了解が取れた」とコメントしている。

 少なからず、地殻変動が進んでいきそうだ。

2010年10月1日金曜日

Reserch Note:MVNO時代に改めて問われる顧客保護

 AM:ある通信キャリアとの定例ミーティングにて。

 通信キャリアから回線を借り、自ら仮想通信キャリアとなって携帯電話サービスを行うMVNOがはじまって約10年が経ったが、当初から危惧されてきた問題があった。

 それが、サービスを提供するキャリア(MVNOキャリア)が何らかの理由でできなくなった場合の顧客保護である。周知の通り、ライフラインの一つである通信キャリアには、一般民間企業のように収益性の追求以外に、高い公共性が求められる。

 市場の活性化を狙った総務省は、2007年2月半ば通信キャリアの反対を押し切る形で「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」を発表。待ち構えていた新規参入企業者に扉を開いた。

 その後、コンサル会社や既にMVNOサービスを提供していた企業、そして小社のようなところにMVNOの相談が持ち込まれ、一時は大きな勢力になるかと期待させた。

 しかし、現時点で総務省が目論んだほどMVNO加入者が獲得できたかというと、それはないだろう。ざっと推計しても数十万のレベルと思われる。

 そんな中途半端な加入者しか集まらない状況下にあるMVNOキャリアにとって、オペレーションコストをペイするのが困難であることは容易に察しがつき、行き着く先は経営破綻となる。

 先日、JALケータイやGIANTSケータイをやっていたインフォニックスが民事再生を申請しKDDIへ譲渡すると発表した。また、先に会社更生法を申請したウィルコムは10月より携帯電話サービスをドコモから支援を受けているソフトバンクへ切り替える。

 こうした事態は高い公共性が求められるとは言え、民間企業である以上致し方ないことではある。しかし、1つ言えることは、全てはキャリア都合で起きているということだ。少なくとも、その点に関しては利用者には全く関係がないのである。

 通信キャリア担当者の「MVNOキャリアの後始末は結局、回線を提供している通信キャリア(=MNO)が尻拭いするしかないということです」という言葉が妙に説得力を感じた。
 

2010年9月30日木曜日

Column:加入者拡大戦略へ舵を切った?モバイルWiMAX

 UQコミュニケーションズが10月より「WiMAX PC バリューセット」の提供を開始することを発表した。同サービスは、「WiMAX統合ポータルサイト」からWiMAXパソコンにて「UQ Flat」もしくは「UQ Step」を契約した人を対象に加入月およびその翌月は無料でWiMAXサービスを利用できるほか、登録料の2,835円が無料となる。更に「UQ Step」契約者は、その後も10ヵ月間は月額基本料金分の380円が割引となり、利用の無い月は0円、最大でも4,600円になるという内容だ。

 2010年8月末時点の加入者数が30万弱と決して順調とは言えないUQコミュニケーションズが打ち出した新たな一手ということだろうが、料金負担を極限にまで軽減することで、これまで以上に加入者増加に舵を切ったということかも知れない。

 店頭にいくと、データ通信カードの競争が熾烈だ。各社、ノートPCを購入する際にモバイル各社のデータ通信カード付きだと3-4万円、あるキャリアでは料金プランによっては最大6万円値引きでノートPCを購入することができるため、機種によっては0円で購入することが可能となっている。

 昔ながらの携帯電話のインセンティブモデルをノートPC+データ通信カードにスライドさせただけのことだが、ある携帯会社の幹部によると、「未開拓の市場だから問題ない」のだそうだ。

 個人的には、そんな屁理屈はどうかと思うのだが、これによってデータ通信カード市場が活性化したことは間違いない。しかし、このインセンティブモデルは、契約期間で顧客を縛ることができるからこそ成立する。

 その点、『縛り』を是とないモバイルWiMAXには追随できない事情がある。携帯電話と違う立ち位置を目指しているからこそのメリットもあるが、今はそれ以上に厳しさを感じている時かも知れない。

 しかし、戦いはスタートしたばかりだ。最大の弱点であるエリア整備がひと段落してからはじめてイーブンとなる。激しい顧客獲得競争にさらされ致し方ない部分があるにせよ、今は経営資源をそこへフォーカスすべき時ではあることも忘れるべきでないだろう。

2010年9月29日水曜日

Research Note:今後も再編進む基地局工事市場

 PM:ある工事会社との定例ミーティングにて。

 キャリアを頂点とするモバイル市場の構造。最近では、市場のオープン化の動きも見られるが、それは一部のレイヤーのごくごく一部の企業に限られているのが実情だ。

 そんな今も昔も変わらない『鉄の関係』を維持しているのが、工事業界ではないだろうか。

 キャリアとのドメスティックな人間関係をベースに、その間は深く、そして複雑に入り組んでいる。

 基地局あたり○○本の回線契約を工事をうけたキャリアからノルマとして課される。機器を購入する際に工事関係の協力金拠出を求められている。両者の関係をあらわす事例として、こんな話をよく耳にする。

 景気がバブリーな頃は、そんなにキツくなかったらしいが、ご多分にもれず、この業界も飽和状態にある。

 いた仕方ないとその関係者は述べる一方で、でもそれこそひと昔前は、鞄に○千万入れて置局交渉に行っていたというのだから・・・,

 弊社では以前に海外の携帯基地局の調査をやったことがあるのだが、あるアジアの国での実態をつぶさに見て、愕然としたことがある。余ったケーブルは野ざらしで、基礎は不十分だし、日本の基準からみると、いつ災害が起きてもおかしくない状態だった。

 それに対して、日本の基地局は、一部を除けば「美しい」。日本人の勤勉さや真面目さを表現するかのように、せい然としている。

 しかし、関係者によるとここ数年のデフレ経済下におけるコスト削減のプレッシャーは凄まじく、これまでの品質を維持しながらコスト削減要求に応えるというのは限界にきていると口を揃える。

 特に、工事する人員、車両、そしてそれなりの拠点を維持していくためには、一定の予算規模と工事需要の見通しが絶対条件となる。今は、それが視界不良なのだという。

 今年に入り、大手工事会社の合併が進んでいるが、今後更にこうした動きが加速していくと推測される。

2010年9月27日月曜日

Column:変容する端末市場で注目されるノキアの「チェンジ」の行方

 CNETによると、投資会社Canaccord Genuityが「iPhone」の粗利益率は50%、営業利益率は30%にもなると発表したという。世界の携帯電話市場で3%程度しかない企業がこの半年あまりの携帯電話端末ベンダーの利益の40%近くを稼いだというのだから、本当ならまさに驚きである。

 周知のように世界の携帯端末市場では、今様々な変容期にある。1つは、売れ筋がフィーチャーフォンと呼ばれる従来の音声端末からスマートフォンへスイッチしたこと。2つ目は、データ通信端末需要という波に乗るかのようにZTE やHuawei といった中国系ベンダーの躍進が目ざましい反面、フィンランドのノキア、スウェーデンのソニーエリソン、米国モトローラなどの欧米系の勢いが少なくとも数の面で陰りが見えることだ。

 欧米系端末ベンダーの不調は、それまでの廉価端末中心の品揃えからスマートフォンといった高級路線へシフトした結果であるという言い方もできるが、その一方で絶対的なポジションにあるノキアは突然CEOが交代するなど、嵐のように変化する市場への対応に苦慮しているようにも映る。

 何せアップルがiPhoneを投入した2007年6月以降、同社の株価は約3分の1になり、時価総額にして日本円で約5兆5,000億円も吹っ飛んだというのだから、ただ事でない。

 端末市場を俯瞰すると高級端末ではiPhone旋風が席巻し、新興国を中心とした低価格端末市場では中国端末ベンダーが欧米系端末ベンダーを上回る低価格で次々に駆逐しながら、それでも一定以上の利益を確保しているような状況にある。

 こうしたなか、自ら開発するより世界中から部品を集め、アジアの低コストでアッセンブリできる製造受託サービスを活用することで大量生産によるシェア拡大戦略で長らくトップに君臨してきたノキアがどのような「チェンジ」で切り抜けていこうとするのか注目される。

2010年9月23日木曜日

Reserch Note:海外の再編の影響受け地殻変動進む国内モバイルインフラ市場

 PM:ある国際的なソフトベンダーとの定例ミーティングにて。

 国内のモバイルインフラ市場は、長らくNEC,富士通の2強がドコモを中心にシェアを抑え、KDDIでモトローラと日立、ソフトバンクで日本エリクソンとノキアシーメンス、イーモバイルが日本エリクソンとファーウェイといった外資系が競っているような状況にある。

 この他にも、例えばドコモには日本エリクソン、ソフトバンクにはNECなども機器を納入しているが、シェアはさほど大きくない。

 その関係者曰く、地殻変動の主役はノキアシーメンスネットワークス((以下、ノキアSN)だという。

 同社は、2007年4月にノキアとシーメンスが母体となって設立された。余談だが、それまでシーメンスはNECと海外インフラ市場で協力関係にあり、当時はその関係がどうなるのかと騒がれたことを思い出す。。

 その後、ノキアSNはLTEやモバイルWiMAXの技術開発を強化する一方で、収益的には中国インフラベンダーなどの攻勢もあり、厳しい状況が続き、リストラを設立当初から強いられることとなる。

 しかし、2010年に入り同社は『攻め』にギアを切り替える。7月にモトローラの通信機器部門を12億ドルで買収すると発表したのだ。これにより、ノキアSNはモトローラから、iDEN事業とネットワークインフラ関連の知的財産以外のほぼ全ての無線ネットワークインフラ事業を獲得した。

 日本でも、その影響は大きいといわざる終えない。ドコモには提携先のパナソニック経由で、ソフトバンクには直にそれぞれビジネスを展開してきたが、モトローラはCDMA基地局の供給や昨年にはLTE基地局ベンダーとして選定されるなど国内ではKDDIと関係が深く、今回ノキアSNは3大携帯キャリア全てとの取引関係を手にしたことになる。

 これは、国内の外資系インフラベンダーでは最大手の日本エリクソンでもなし得ていないことだった。

 これ以外にも、ここ数年の中国系インフラベンダーの躍進も目覚しく、LTE時代にインフラ市場の行方は、しばらく流動的となりそうだ。

2010年9月22日水曜日

Column:次へ向けたスマートフォンの戦い

 ニールセンによるとスマートフォン先進国の米国では、携帯利用者の割合が25%を占めるまでに急成長しており、同社によると2011年末にはスマートフォンのシェアが50%を突破すると予測している。

 モバイルOSでは、火付け役であるiPhoneの躍進が続くものの、GoogleのAndroidが急速にシェアを拡大させており、減少が続くマイクロソフトと対照的である。

 日本でもスマートフォン旋風は凄まじい。家電量販店のPOSデータを集計しているBCNによると6月21~27日のスマートフォン構成比は22・4%だったとしている。

 既にKDDIを含め3大携帯キャリアでは、スマートフォンが揃いはじめているが、市場では断然iPhoneリードという状態に変わりはない。

 しかし、次の戦いの舞台となる秋冬端末では、すでにドコモが当初5機種と予定していたスマートフォンを7機種に拡充すると発表するなど、勢力図に一定のインパクトを与えそうだ。

 携帯メールやFelica未搭載など、世界標準仕様が国内を席巻してきたが、次の主役は日本ローカル技術の搭載による1台目端末になるではないだろうか。これまでスマートフォン利用者は、ローカル技術に対応していないことから2台目端末として購入しているケースが多いとされてきた。

 1台目端末として躍り出れば、2台が1台に集約されるのだから短期的には出荷台数に影響を及ぼす可能性はあるが、これもその次に起きるであろうSIMロック解除時代を迎えれば解消できる問題である。

 個人的には、携帯キャリアと端末ベンダーの関係上、主導権がソフトバンクではなくアップルにあるiPhoneより、Xperia以降のドコモのマネジメント能力の方が高いように感じる。うがった見方をすると、iモードメールへの対応やFeLia搭載なども、技術的な問題というよりSIMロック解除の時期を今から見据え、自らの意思として段階的にやろうとしているような・・・。

 いずれにしても、スマートフォンの次の戦いの号砲が鳴るまでの時間は、そう長くはなさそうだ。

2010年9月17日金曜日

Reserch Note:日本へのTDD-LTE導入の可能性

 AM:ある機器ベンダーとの定例ミーティングにて。

 今後のモバイル系キャリアのネットワークインフラの進化について議論となった。

 すでに携帯系のキャリアは、次世代技術としてLTE(Long Term Evolution)、またはLTEまでのつなぎとしてDC-HSDPAを導入する動きがはじまっている。

 3Gでは、宗教論争のようにW-CDMAとCDMA2000が対立してきたが、次世代ではそろってLTEへ収斂しようとしている。

 一方、その対抗馬として位置づけられるウィルコムのXGPとUQコミュニケーションズのモバイルWiMAXのTDD(Time Division Duplex)勢の戦略はどうか?

 その関係者によると、TDD方式という縛りがある以上、選択肢は限られており、その最有力候補がTDD-LTEだという。ちなみに、ドコモなど携帯系キャリアが導入を予定しているのは、FDD((Frequency Division Duplex)-LTEである。

 TDDは1つの周波数帯を時間軸で細かく区分し、送信と受信を高速に切り替えるのに対し、FDDは周波数帯を送信と受信に分割して同時送受信する。

 世界的にも次世代の標準規格となると期待されているLTEに、XGPが、そしてモバイルWiMAXであっても、その延長でコスト的に対抗していくのは至難のワザだという。

 しかし、TDD-LTEなら対抗できる可能性は十分にある。理由は、TDD-LTEは世界最大の携帯キャリアであるチャイナモバイルが採用を予定しているからだ。

 FDD-LTE方式との互換性も高く、インフラ機器ベンダーの中には1つの無線機でソフトウェアの入れ替えで両規格に変更できるようなところも出てきている。

 国内導入への残されたハードルは、官庁へのネゴだけか?

 その行方が注目される。

2010年9月16日木曜日

Column:混迷の末にようやく決着し、また禍根残した「携帯端末向けマルチメディア放送」②

 そもそも総務省が主導する周波数割り当ては、公正というか適切な方法なのだろか。総務省は一連の公開説明会などの場で2社が提出した開設計画案について、総務省が電波監理審議会へ諮問し、答申を得て決定するプロセスについて、「総務省が評価した上で第三者(電波監理審議会)から意見をもらう。総務省はプロフェッショナルな立場から評価するので、しっかりした結論を導き出せると考えている」とコメントしている。

 公の場でこうした発言をするあたり、ならば2.5GHzの免許割当で経営に行き詰まったウィルコムを選定し、更に遡れば2005年にはTDD方式の携帯新規参入では、それまで全く実績のないアイピーモバイルに免許を付与したもののサービス開始前に破綻してしまったことについて、どう総括しているのかと思ってしまう。

 一方、ここ数回行われている周波数割当の流れを見ていると、2.5GHz帯ではKDDI系のUQコミュニケーションズが選ばれ、今回の携帯端末向けマルチメディア放送はドコモ系のマルチメディア放送が・・・・。そして、次の700/900MHzではソフトバンクが選ばれるという出来レースでは?とうがった見方をしてしまう。

 こうした疑念が出ないためにも、透明で公正な決定プロセスを議論する時期に来ているような気がしてならない。

 最後に「携帯端末向けマルチメディア放送」の免許を取得したマルチメディア放送の市場に受け入れられるかについて考えてみたい。

 同社の計画によると、先行するBeeTVの例もあり、次世代放送の月間利用料は300円程度と安価なので受け入れられるとしてるが、それならBeeTVとどのように棲み分けようとしてるのだろうか。そして、仮にBeeTVが成功しているというのなら、サービス単独でどのくらい黒字化しているのだろうか。

 ワンセグは利用者に聞くと、携帯電話の必須のアイテムとして上位に挙がる。では、それほど使っているのかというと、どうだろう。これほど利用者の「欲しい」と実際に「使っている」の落差が大きい機能も珍しいのではないだろうか。

 事業化の道が、決して平坦でないことだけは間違いなさそうだ。

2010年9月15日水曜日

Column:混迷の末にようやく決着し、また禍根残した「携帯端末向けマルチメディア放送」①

①混迷の末にようやく決着
 次世代放送「携帯端末向けマルチメディア放送」の事業免許を巡り、総務省の諮問機関である電波監理審議会は、2010年9月ドコモ陣営であるマルチメディア放送(mmbi)を基地局を整備する受託放送事業に選定した。

 国内では2011年7月24日にアナログ方式によるテレビ放送が終了し、地上デジタル放送へ完全移行する。携帯端末向けマルチメディア放送は、その空き周波数帯の一部であるVHF-Highの14.5MHz幅の帯域が割り当てられることとなっている。

 同サービスを巡っては、民放キー局と組んで国産技術を推すドコモ陣営と、クアルコムの技術をベースに海外での実績をアピールしてきたKDDI陣営の全面対決という構図だったが、その決定に至るまでのプロセスは混乱の連続だったと言わざるをえない。

 総務省主導による議論は2007年7月に「『携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会』の開催」からで、会合は14回開催され、報告書にはVHF-Highを全国向け放送、VHF-Lowを地域ブロック放送に割り当てること、免許割り当て後の世帯カバー率を「5年後に9割」を参入条件とすることなどが明記された。

 その後、2009年8月に携帯向けマルチメディア放送の基本方針が総務省から公表されるも、技術方式については一本化の是非が論じられてたきたにも関わらず、統一される訳でもなく放送設備を持つ受託事業者として、ISDB-Tmm方式を採用するマルチメディア放送(mmbi)、MediaFLO方式を採用するメディアフロージャパン企画が参入を表明する。

 混乱に拍車をかけたのが、2010年2月総務省から「無線設備規則の一部を改正する省令案等の電波監理審議会への諮問及び当該省令案その他の携帯端末向けマルチメディア放送の実現に向けた制度整備案に対する意見募集」という報道資料だった。その中で、総務省はそれまで、周波数を割り当てる事業者数を1~2としていたものを「1事業者」と明示したのだ。

 技術方式も決まらず、席は1つと言われれば、2社の戦いが激しさを増すのは至極当然だろう。選定レースは、当初、ワンセグを応用した「ISDB―Tmm」方式を開発して臨んだドコモの有利が伝えられたものの、透明性の高い公開説明会の開催を強く求めるKDDIの猛烈な巻き返しがによって、情勢は一気に視界不良となる。

 7月には原口一博総務相が「米国に配慮し、公正に判断するように」と総務省幹部に指示したこと、更に8月には民主党から官主導の選定方法やオークション方式の導入を提案するなど、混乱に拍車がかかる。その結果、総務省が7月に予定していた決定は延び、8月になっても総務省は案を出すことができず、中立的な立場の電監審に判断を委ねるという異例の展開となった。

 メディアフローが5年間で基地局865局、総額961億円を見積もるのに対し、mmbi側はわずか125局で総額438億円と、半分以下の投資額で済ませようとしている。その違いから両社のサービスを一言で括るとメディアフロージャパンは『エリア重視型の携帯電話』で、mmbiが『安価コスト重視型のテレビ』というイメージだ。

 今回mmbiが選定され、次の焦点になりそうなのが、ドコモ陣営だったソフトバンクと今回敗れたKDDIの対応だ。もともとKDDI陣営だったが2008年にドコモへ鞍替えしたソフトバンクにドコモサイドは、インフラ子会社への資本参加も要請していくとしているが、帯域利用料などの問題もあり一筋縄には行きそうにない。更に混乱が予想されるのがKDDIだ。そもそも今回の決定プロセスについて納得しておらず、融和のハードルは高そうだ。

 当然だが、ドコモが携帯市場の半分を持っているとは言え、仮にドコモだけしか携帯端末向けマルチメディア放送をやらないという事態にでもなれば、それは総務省主導で進めてきた『電波行政の失敗』以外の何物でもなのではないだろうか。

2010年9月2日木曜日

Column:新星堂の携帯販売進出

 日経新聞の報道によると、音楽CD販売の新星堂は携帯電話の販売事業に参入するとの報道があった。携帯電話で音楽を楽しむ人が増えていることに加え、CD需要落ち込みを携帯販売によって補う狙いががあるとしている。

 今後、同社では1年後に約160の全店に広げ、米アップルの「iPhone」など高機能携帯電話を中心に販売。パートナーとしてソフトバンク系代理店の大手であるテレコムサービスと協力していくとしている。

 こうした報道を受け、ジャスダックの新星堂(7415)の株価は8月31日、前日比+46%の大幅高を記録するなど、収益基盤拡大への期待感が寄せられた。

 音楽CD市場の苦境は、今年8月のHMV渋谷店閉鎖の報道からも明らかだが、日本レコード協会によると2009年の音楽CD生産額は2008年比15.5%減の2,460億円。11年連続で前年実績を割り込んでいるような状態だとしている。

 一方、携帯の販売現場は複数の携帯キャリアを扱う併売店が減少し、量販店とキャリアショップと呼ばれる専売店に2極化が進んでいる。携帯電話端末の販売低迷の影響を受け、販売店の苦境は続いており、伊藤忠系のITCネットワークやティーガイアなどは中国市場へ進出したり、SIMロック解除を見越しカメラ店のキタムラやヨドバシなどは、中古携帯の取扱いをはじめたりしている。

 こうしたなか、CD販売に強みを持つ今回の新星堂は、店舗の付加価値化や個性化という意味でユニークな取り組みと言えそうだ。

2010年8月31日火曜日

Column:スマートフォン増加の功罪

 2010年は、スマートフォンが大きく躍進した年となりそうだ。各調査会社から今年度のスマートフォン市場の規模について発表されているが、弊社でもほぼ同レベルと推計している。

 最近では、iPadに代表される、タッチパネル方式で大画面のタブレット端末も順調な普及を見せているようで、これまでの携帯電話の高機能競争は何だったのかと思ってしまうほどの様変わりである。

 一方、こうした新端末の登場は、モバイルネットワークのトラフィック急増という問題も引き起こしている。スマートフォン先進国である 米国のAT&Tでは、3%のスマートフォンユーザーがネットワーク容量の40%を利用している状態で、最近になりデータ通信プランの無制限プランを廃止してしまったことは記憶に新しい。

 こうした状況は、日本も似たりよったりである。各社の関係者の話を総合すると、概ね2-3%の顧客が全体のトラフィックの半分近くを占有しているとしている。そのため各社は、SBMの電波倍増宣言よろしく、携帯基地局の増強はもちろんのこと、パケット通信速度の制限、フェムトの設置、そしてWiFiへの回避などの手を打っている。

  関係者のなかからは、 LTE時代になれば何とかという声も聞こえるが、それだけではとてもさばき切れないことは明らかだ。例えば、スマートフォン利用者の通信トラフックは、通常の携帯電話利用者の約10倍とされている。LTEになっても通信速度は、当初5倍程度しか高速化されないのだ。

 スマートフォンの比率が今後拡大していくことは明らかで、ARPU減少に悩む携帯キャリアにとっては、スマートフォンという存在はARPU増加の切り札である反面、トラフィック問題の根幹でもある。

 スマートフォン普及でますます厳しくなるトラフィックコントロールの問題をどのように解決していくのか。次世代通信ネットワークのマネジメント戦略上からも、最優先のイシューとなりそうだ。

2010年8月29日日曜日

Analyst Column& Report.Blog 再開のお知らせ

約2年ぶりですが、Analyst Column& Report.Blog を再開することとなりました。モバイル・IT産業の動向について、独自のアングルから分析していきたいと思います。

「Mobile News Letter」と合わせ、今後ともどうぞよろしくお願いします。