2007年10月30日火曜日

◎アイピーモバイル自己破産

 TD-CDMAという国産技術で新規参入を目指していたアイピーモバイルが自己破産を発表した。東京地裁へ自己破産を申請し、負債は債権者約110名に対し約9億円だそうだ。

 同社は、2005年11月にソフトバンク(BBモバイル)やイー・アクセスとともに総務省より特定基地局開設計画の免許の交付を受け、携帯電話業界への新規参入を予定していたが、事業資金不足などの理由で何度かサービス延期を発表。今年に入り、事業の方向性を巡る社内のゴタゴタから筆頭株主が何回も入れ替わり(マルチメディア総合研究所→森トラスト→Next Wave Wireless LLC社→森トラスト→杉村五男氏)、免許返上は時間の問題と言われてきた。

 IMT2000の規格の1つでありながら、世界でほとんど商用化されていないTD-CDMA技術の特性(例 アドホック)を活かすことで、「既存各社との差別化を図り、モバイルの新しい市場を切り開いて行きたい」「何故、同じく新規参入する他社はTD-CDMAからW-CDMAへスイッチするのか。それでは0からインフラを作っても全く勝負にならない」・・・参入発表当時、インタビューした際に私のノートに残っている関係者の言葉だ。

 免許返上のタイミングから気になるのは、2.5GHz帯の無線ブロードバンド向け周波数割り当てとの関係だ。同周波数の獲得を目指し、現在4社が名乗りを挙げているが、選ばれるのは2社。技術方式では次世代PHS1社、モバイルWiMAX3社となっており、単純にアイピーモバイルが予定していた2GHz帯にも対象を広げればと考えるのは、当然だ。しかし、実際には次世代PHSやモバイルWiMAXには2GHz帯のプロファイルが規定されていないこと。更にはそもそもアイピーモバイルの枠は開設指針に通信の技術方式としてTD-CDMAおよびTD-SCDMAを使うことが定められていることから、一度更地にする必要もある。つまり、仮にやるにしても、それなりの時間を要するということになるのだ。

 個人的には、思い切って中国が主導するTD-SCDMA技術をアイピーモバイルが当初から選択していれば、端末や設備調達、そして資金面からもうまくいったのではないかと思っていたのだが・・。これも今となっては、あとの祭りでしかない。

2007年10月4日木曜日

◎KDDIが端末・通信分離モデルの料金プランを発表/少しずつ開門される?ケータイ市場

 KDDIは、端末価格を引き上げる代わりに通信料を引き下げる携帯電話の新しい料金体系を11月に導入すると発表した。月額基本料が従来に比べて44%、通話料が25%安くなるとしている。今後、利用者はこれまで通りのインセンティブ制度を利用した「フルサポートコース」と端末購入価格は高いが毎月の通信料金が安価な「シンプルコース」の2種類から選択できるようになる。 仮に新料金プランが市場で定着すると、端末の買い替え需要が減退し端末ベンダーは打撃を受けるという指摘がある。

 ドコモと同様の仕組みを導入するとしており、今後、市場はどちらへいくのか注目されるが、今回のKDDIのプラン内容には色々問題や恣意性も感じるものの、選択肢が増えること自体は好ましいことではないだろうか。

 携帯キャリアにとって、今回の措置は総務省の「モバイルビジネス研究会」の要望に応える形で行われたわけだが、現在の端末ベンダーやインフラ企業、コンテンツプロイダーなどの国際競争力という観点から考えると、市場オープン化は火急の課題と言える。

 例えば、携帯電話端末は国内11社を合わせても世界で10%以下。コンテンツプロバイダーは、国内市場成熟化の余波で海外で出て行ったものの、あまり成功したという話は聞こえてこない。何もその責任が携帯キャリアだけにあるとは私は思わない。その理由は、明らかに健全な市場ではないということが分かっていながら、国や業界はそれを受容してきたわけだからだ。色々な関係者の方と話をするにつけ、世界をリードしているとしてきた日本の移動体通信産業は、実は『孤独の進化』を遂げてきただけだったのではと思ってしまう。

 iモードが誕生した頃、我々のような会社には海外の携帯キャリア、ベンダーから多くの問い合わせをいただいた。理由はiモードのような先進的なビジネスモデルについて知りたいというものだ。その頃は、明らかに日本の移動体通信産業は世界をリードしていたと思う。しかし、今そうした企業の担当者と話すと一言「今の日本にはベンチマークするものがない」とにべもない。

 2008年以降、移動体通信産業には従来の携帯電話やPHSに加え、WiMAXという世界標準のシステムが導入される。こうした新サービスが市場でどのくらい受け入れられかは分からないが、確実にいえること。それは、これまで以上にコンピュータ系の企業が台頭してくるということだ。単純に通信というカテゴリーだけでくくれない移動体通信産業の未来は通信とコンピュータという異文化の衝突が本格的に起きるのだと思う。

 日本の国際競争力を強化 するために何が本当に必要で、逆に何を捨てなくてはいけないのか。
改めて考えさせられる。