2013年12月27日金曜日

今こそ『顧客ファースト』のススメ

1.大本営発表の限界

インターネットの普及は、あらゆる意味において供給者と需要者の距離を短くしただけでなく、時には需要者が供給者となるような事態も生んでいる。

例えば、私達がやっている情報を提供するという仕事であれば、昨日まで端末の回路設計をやっていた人がブログを立ち上げ、それを生業としている人よりも優れた情報を提供するといったことが日常的に起きている。

こうしたことは、モバイル産業でも全く同じてある。キャリアがチャンピオンだった時代は、大本営発表よろしく、情報は一方通行で、顧客に検証や精査、別の選択肢という道は非常に限られていたように思う。

しかし、今やネットをググれば、様々な情報にアクセスでき、大本営発表の真偽のほどを個人レベルで推し量ることが可能となった。それだけではない。仮にキャリアにとって不都合な事実が流れ、それがマスコミであまり伝えられないとわかると、何か操作や圧力が・・・。というように、逆に情報が伝播して行くような事態も起きている。先ごろ、あるキャリアがクレジットカードの個人情報が漏れるという深刻な事態を起こしたのに、マスコミが沈黙したケースは、まさにそうだろう。

また、あるキャリアショップでは、ゼロ円で端末を提供する代わりに、10万円以上のオプション加入をさせられたとニュースになったが、地方の小さなお店で起きていることが、一瞬にして日本中に伝播する時代なのだ。

問題の本質は、これまでのように『キャリア都合で事が動かなくなっている』ということだ。

2.坂の上の世界

iPhoneで差別化ができなくなり、今キャリアはTVCMを使ってLTEのエリア整備を競うように訴求している。しかし、顧客は本当にそこを選択肢としているのだろうか?そんな素朴な疑問を持ってしまう。

キャリアの中には、昔の栄光よろしくAndroid、iOSの第三のOSを模索していると伝えられるが、それは顧客にとって、これまでのOS以上にどういった価値を提供できるのだろうか。そんなことは二の次で、そこにはただ相変わらずのキャリア都合があるようにしか思えない。

本当の意味で『顧客ファースト』というスタンスへいつになったら転換できるのか。スマホの次は、いよいよ「キャリア中抜きの時代」となりやしないのだろうか。

執筆:天野浩徳

2013年12月6日金曜日

いよいよ動き出したVoLTEサービス

 いよいよ、国内市場でも本格的にVoLTE(Voice over LTE)が動き出した。すでに韓国市場ではVoLTEサービスの提供が開始されており、米国でも2014年中の運用が予定されている。

 エリクソン・ジャパンが2013年10月31日に、ソフトバンクモバイルのVoLTEソリューション供給ベンダに選定されたと発表した。今後、エリクソン・ジャパンはソフトバンクモバイルの既存モバイルコアネットワークへIMSコアの導入、アップグレードを行う。

 VoLTEインフラはソフトバンクモバイルの将来のネットワーク仮想化計画とテレコムクラウド導入のベースにもなり、ネットワークの周波数利用効率の向上も期待できる。

 また、ノキア ソリューションズ&ネットワークス(NSN)も10月30日に、プライベートイベント「eXperience Day2013」を開催した。イベントではVoLTE SRVCCのデモも実施され、クリアな音声を聴くことができた。

 すでに韓国市場ではSK TelecomとLG U+がVoLTEサービスを提供しており、NSNは両社に機器を供給している。韓国市場でのVoLTE商用化はLTEネットワークのみでの運用となり、国内市場のLTEとW-CDMA方式ネットワーク混在の運用とは様相が異なる。

 NSNのVoLTE SRVCCは国内キャリアと同様に通信方式が混在しているシンガポールStarHubが導入する予定とされる。国内市場でもエリクソン・ジャパンによるソフトバンクモバイルへの供給が決定した今、NSNはすでに取引のあるKDDIへの供給を決定したいところであろう。

 一方、NTTドコモの動きはどうであろうか。2013年6月に、NTTドコモが携帯電話の音声通話に定額料金を採用する検討を開始したと報道された。報道によると、2014年度を目標に、新規投入する端末から音声定額制サービスを標準化する方針で、利用料は月額1,000円前後を軸に調整するという。

 おそらく、このサービスはVoLTEを利用したものになる見込みである。以前、国内ベンダからNTTドコモはVoLTEの品質にはこだわっていると話を聞いたことがあり、商用化されるVoLTEサービスには高品質な音質が期待できそうだ。

 NTTドコモが2014年中の提供開始ということから、他キャリアも追随するものとみられる。国内市場でも2014年以降、音声定額制サービスが標準的なサービスになっていくであろう。

執筆:大門太郎