2010年12月6日月曜日

Reserch Note:iPad失速で第一幕が終わったタブレット端末市場の次の戦い

 AM:ある量販店関係者との定例ミーティングにて

 スマートフォンと共にモバイル業界の起爆剤として期待を集めているiPadなどタブレット端末。米国では既に年末商戦の目玉として販売も好調とのことだが、その量販関係者によると、iPadが発売された当初こそ好調な伸びを示したものの、その後は減少傾向が続き、直近では半分近くまで落ち込んでいるらしい。

 そうした状況を憂慮してか、ソフトバンクモバイルは12月より公式ショップ「ソフトバンクショップ」でのiPad取り扱いを2,000店(これまでは100店舗強だった)に拡大するとともに、携帯機能が搭載されたモデルについて、2年契約を前提に端末代5万8,320円を実質0円にするキャンペーンを展開してこ入れを図ろうとしている。

 一方、タブレット端末市場への関心を示しているのはソフトバンクだけではない。11月末からはドコモがサムスン電子の「ギャラクシータブ」を投入したのに続き、シャープとソニーは電子書籍が読めるタブレット型端末を発売する。シャープが発売する「ガラパゴス」は、持ち運びできる5.5型と、家庭用の10.8型の2モデルを展開。電子書籍約2万冊のほか、新聞や雑誌も用意した。ソニーも「リーダー」を発売予定で、紙の本を読むように目が疲れにくい電子ペーパーを使ったのが特徴だ。

 注目度抜群のなか新たに誕生したタブレット端末市場だが、iPadの失速で第一幕は終わり、年末からはプレーヤー混戦のなか次の戦いがスタートすることとなる。

 来年初めにはiPadの新型投入も噂されているが、その関係者によると顧客に具体的な使い方を提案できるかが普及の鍵を握るとのことだった。

2010年12月2日木曜日

Column:復活の狼煙を上げたウィルコムの切り札投入

 ソフトバンクの傘下に入り、東京地方裁判所に提出していた更生計画が認可されたウィルコム再生の一歩として、毎月の基本料と別に980円の追加料金を支払えば同社の加入者同士だけでなく、他社の携帯電話や固定電話への国内通話も無料となる「だれとでも定額」を始めることとなった。12月3日より開始する。

 オプションサービス「だれとでも定額」(月額980円)に加入すると、ウィルコム以外の携帯電話や一般加入電話、IP電話への10分以内の国内通話が、月500回まで無料で利用可能となる。10分を超過した場合は利用料金コースに応じた通話料がかかる。500回を超過した場合は21円/30秒の通話料金となる。

 もともと同サービスは会社更正法の影響を受けないウィルコム沖縄が4月9日~5月31日(受付期間)の期間限定で提供した結果、5月末時点での契約数が2,500件純増の40,500件(対前月比6.6%増)を記録。全国的な反響の大きさから9月からは新たに北海道/宮城/広島で同様のサービスが試験という位置づけで提供されてきた。

 再生への道筋が二転三転し、ウィルコム自身が意思決定できる範囲が狭まるなかで、支援する親会社のソフトバンクは他社を含めた完全定額は世界初の画期的なサービスであるものの、一時的に加入者が増加しても採算割れが濃厚ということで、同サービスの商用化には消極的だったとされるが、あえてGoサインを出した理由に興味を抱く。

 勝手に推測すれば、再生にあたり何よりもピーク時(2007年7月の465万人)から100万弱の顧客流出という止血対策を優先する必要があったのではないだろうか。

 一方、複数の関係者からは、ソフトバンクによるウィルコム買収の狙いについて様々な意見を伺っているが、整理すると以下のようになる。
 ・370万の顧客基盤
 ・PHS基地局エントランス回線のSBTへのスイッチによるSBグループシナジー
 ・16万局のPHS基地局の携帯基地局向け用地としての活用
 ・周波数の獲得
 
 更生計画案では現行PHSを展開しているウィルコムへのソフトバンクの出資金額は3億円しかなく、ヒットしている「iPhone」の顧客獲得コスト約5万円/台という前提に立てば、決して悪くない買い物ではなかったか。

 もともとPHSサービスは、2000年から2004年までのKDDI時代は親会社との競合を敬遠され、データ通信を主軸にした展開を押し付けられながらも加入者を増加させてきた。2004年には米投資会社が買収し、独自のポジションを確立することに成功。しかし、その後ソフトバンクの音声定額、イー・モバイルのデータ通信定額サービスの攻勢を受け一気に失速。更には次世代PHS事業への投資負担も重なったことで経営悪化が表面化し、今年2月会社更生法の適用を申請した。

 このようにウィルコムの失敗は、弱肉強食のサバンナで体の小さい小動物が大型の肉食獣に狙われるがごとくという側面はあったにせよ、本質的な問題はコスト削減を優先するあまり、果敢に仕掛けていく力が弱かった(=無かった?)ことに尽きるのではないかと思う。

 言い方としては誠に失礼ながら、外部から社長を招いた一時期を除けば、PHSラブ(LOVE)な人達が集まり常に『守り』の視点で事業にあたっていたような・・・。

 その意味で、今回の新サービスはインパクトを持って市場では迎えられるのではないだろうか。新生ウィルコムの復活に期待したい。

2010年12月1日水曜日

Column:KDDI「IS03」ヒットの影で気になるネーミングの話題

 KDDI復活の切り札として投入したスマートフォン「IS03」が順調な滑り出しを見せているようだ。11月26日に発売となったが、同社によると、インターネット上で事前購入宣言した人の数が27万人に達しているとしている。

 同端末は、スマートフォンとしては初めて「おサイフケータイ」や「ワンセグ」など、これまで国内向けフィーチャーフォンに標準搭載されてきた機能が使えるのが大きな特徴で、和製スマートフォンの尖兵に位置づけられている。

 もっとも、27万人のうち新規契約と答えた割合は1割程度で、多くは他のau端末からの機種変更が占めているとされており、全く意地悪な見方だが、これまでKDDIには買い換えたい端末がなかったということの裏返しのような気がしないでもない。

 個人的には、ソフトバンクの「iPhone」「iPad」、ドコモの「Galaxy」などライバルはスマートフォンにクールなネーミングなのに、何故KDDIだけは「IS01」・・・「IS03」と型番のようなネーミングなのだろう???不思議だ。

 短距離走世界一のウサインボルトやレディーガガといった尖がった人を使ったクリエイティブを製作するのだから、もっと考えようもあったろうにと思ってしまう。

 伝え聞くところによると、端末を供給しているシャープは「ガラパゴス○○」としたかったらしいが、KDDIサイドの猛烈な反対にあったという話もチラホラ。

 いずれにしても、今回のヒットを本格的な回復軌道へつなげることができるか、12月からスタートする新体制に注目が集まることとなりそうだ。