2011年12月27日火曜日

Reserch Note:取材先で聞いたキャリア各社のネットワーク逼迫とLTE展開
ようやく、「携帯電話基地局市場及び周辺部材市場の現状と将来予測」が発刊しました。制作が遅れ、ご予約いただいておりました関係各位には大変ご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫びいたします。

さて、今回、調査レポートを制作する上で、基地局に関連するベンダ各社を中心に取材活動を行い、さまざまな“生の声”を伺うことができました。基地局市場自体はモバイルキャリア各社が年間1兆5,000億円もの設備投資額を投下する中、1兆円程度を占める大きな市場になっています。

これらの市場には無線機やアンテナ、コネクタ、電源、蓄電池ベンダ、基地局工事を担当するエンジニアリング会社が参入し、キャリアのインフラ構築に一役買っています。

携帯電話基地局市場及び周辺部材市場の現状と将来予測を制作するにあたり、できる限り、調査レポートに“生の声”を盛り込みましたが、それでも掲載しきれなかった部分があります。それらの中で今回は携帯電話ネットワークの逼迫やKDDI(au)のLTE展開などを取り上げてみます。

携帯電話ネットワークの逼迫に関しては、ユーザ数の多いNTTドコモが逼迫しているといった声や、「iPhone」ユーザ増のソフトバンクモバイルが最も逼迫しているという声がありました。KDDI(au)のネットワーク逼迫については声があがらず、スマートフォンへの移行が遅れた結果、ベンダ各社はKDDI(au)のトラヒックが他キャリアに比べ、まだ余裕があるとみているのでしょう。

確かに現在のネットワークの逼迫やトラヒック急増は、キャリア各社によるフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行が大きな要因とされています。しかし、携帯電話サービスは限られた周波数帯を利用するため、今後はユーザにも配慮が必要となるかもしれません。そのため将来的には節電ならぬ、節網(節ネットワーク)の考え方も登場することでしょう。

一方、KDDI(au)のLTE展開については、ソフトバンクモバイルが2012年中の開始とやや不明確ですが、現状ではKDDI(au)の2012年12月開始が最後発となる見込みです。KDDI(au)自体はロケットスタートを目指すといっていますが、実際にはLTE展開が順調に進んでいないのではないかという声も聞きました。

総務省総合通信基盤局の「無線局情報検索(2011年11月12日時点)」において、KDDI(au)は800MHz帯で関東エリア829局、九州エリア599局、東海エリア486局となっています。九州エリアでの基地局が多いため、こちらでKDDI(au)はLTE試験を行っているのではというベンダもいました。

また、NTTドコモは明確なLTEエリア展開計画を公表していますが、他キャリアに関しては今一つ不透明な状態です。そのためKDDI(au)はまだ、LTEエリア展開に迷いがあるのではと勘ぐる声もありました。LTEサービスはキャリア各社にとって、既存3Gサービスに代わる将来の基盤サービスとなる重要なネットワークです。

自社保有帯域すべてへのLTE化を前倒しし、早期にLTEへユーザを移行させたいNTTドコモ、LTEよりもiPhoneのトラヒック分散が課題のソフトバンクモバイル、EV-DO Advancedを導入しつつLTEのロケットスタートを狙うKDDI(au)。今後の各社のLTE展開に目が離せません。

執筆:大門太郎

関連資料
「2015年度における携帯電話市場の動向と予測」
~キャリアの視点から2015年度の携帯電話市場を総合的に分析~
http://www.mca.co.jp/pay_contents/FormMail/forecast2015.html

「携帯電話基地局市場及び周辺部材市場の現状と将来予測」
~基地局市場をキャリア・メーカー・エンジニアリング会社等多角的な視点からトータルに分析~http://www.mca.co.jp/pay_contents/FormMail/mobileBasement&PartsMarket2011.html

モバイル-IT調査レポート「IT Forcaste Report」
http://www.mca.co.jp/ifr/top.htm

2011年12月22日木曜日

Column:急速に広がっていくXiエリア

NTTドコモがLTEサービス「Xi(クロッシィ)」のエリア拡大を積極的に進めていま
す。当初計画を前倒しし、2010年度に約1,100局(人口カバー率約8%)であった基
地局数を、2014年度には約50,000局(同約98%)にまで拡大する計画です。当初、
2014年度に約35,000局(同約70%)であったため、約15,000局の前倒しとなり、NTT
ドコモのXi移行の本気度が伺えます。

自社保有のあらゆる帯域でLTE化を進めるNTTドコモは2GHz帯に続き、800M/1.5GHz
帯でも開始させ、1.7GHz帯へも拡大を図る計画です。さらに新周波数帯として、割
り当てが予定されている700MHz帯も視野に入れているようです。

WiMAXのUQコミュニケーションズを傘下に持つKDDI(au)、AXGPのWireless City
Planningをグループ会社に持つソフトバンクモバイルに比べ、NTTドコモにはNTTグ
ループのWi-Fiのみとなります。そのためNTTドコモは周波数利用効率の高いLTEへの
移行を促進させることでトラヒックの分散を図っていく考えなのでしょう。

また、私事ですが、実は2011年11月から「ARROWS Tab LTE F-01D」のモニターとな
り、使用感などを試させていただいています。現状、ARROWS Tab LTE F-01Dは通勤
時のお供、子どもたちのおもちゃとして、大活躍しています。

Xiエリアの状況としては、さすがに山手線圏内はXiエリアとして、LTEでの通信が可
能ですが、中央線に乗り換え、都心から離れていくに従い、3Gマークの表示に切り
替わります。さらに自宅は2012年2月末までの拡大予定エリアに入っており、残念な
がら今はまだ3Gでの「FOMA」エリアになっています。

通信速度に関して、Xi利用時には申し分ないのですが、FOMAに移り変わった際にXi
利用時との速度差を大きく感じます。自宅で「YouTube」を観るにしても、FOMAでは
通信が滞り、観るに耐えない状況です。これらはいずれXiエリアの拡大に伴って解
消されていく見込みですが、早期的なXiエリア展開が望まれます。

なお、NTTドコモのXi向け設備投資やエリア展開に関しては、「携帯電話基地局市場
及び周辺部材市場の現状と将来予測」に詳しく掲載しています。ご興味がございま
したら、ぜひ、弊社サイトまで!!

執筆:大門太郎
関連資料
携帯電話基地局市場及び周辺部材市場の現状と将来予測
~基地局市場をキャリア・メーカー・エンジニアリング会社等多角的な視点から
トータルに分析~


モバイル-IT調査レポート「IT Forcaste Report」
http://www.mca.co.jp/ifr/top.htm